やきとんユカちゃんPhoto by Satoru Okada

新型コロナウイルスの感染拡大により、深夜営業の自粛を強いられる飲食店が受けた打撃は、生半可なものではない。首都圏の一都三県では2度目の緊急事態宣言によって午後8時までの営業自粛が呼びかけられ、国会では応じない事業者への罰則が議論されるなど深刻な状況が迫っている。東京・新橋で「やきとん ユカちゃん」を経営し、店主仲間と深夜営業を続ける「新橋一揆」の案をテレビ取材で語った藤嶋由香さんに、コロナ禍に苦しむ飲食店の思いを代弁してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

(このインタビューは2020年12月16日に行いました)

緊急事態宣言下では売り上げ9割減
店主仲間と話し合った「新橋一揆」

 緊急事態宣言が出された4~5月は、売り上げが新型コロナウイルス感染拡大前よりも9割減りました。持続化給付金は、何度通帳を記帳してもなかなか入金されない。取引先への支払いもとりあえず待ってもらい、貯金を取り崩して生活していました。

 コロナ以前は、都内3店の売り上げが大体、月間で合計1200万円くらいでしたが、人件費が400万円、家賃が150万円、仕入れに400万円くらいかかっていたので、残りは250万円程度。減収のダメージはかなり大きいです。

 4月頃は、東京都の夜間の休業要請に従い、19時半ラストオーダー、20時閉店で営業していましたが、とても持ちません。周囲の飲食店の店主も同じ状況でした。

「新橋一揆でもしようか」――。店主の仲間たちとの間で、こんな話になりました。いわゆる“自粛警察(営業自粛をしていない店舗などに一般人が嫌がらせをする行為)”に不安があり、自分たちの身を守るため、仲間の店と一緒に20時以降も営業を続けようと考えたのです。実際にはしませんでしたが、そうしないと生活できないほど追い詰められていました。

 テレビ番組の取材で新橋一揆の考えについて話し、知らない人から電話で怒鳴られたりもしました。ですが、頑張ってほしいと書かれた手紙を頂いたり、「テレビで見た」と言って食べに来ていただいたりなど、好意的な反応が多くて安心しました。

 夫が経営する本店が麻布十番にあり、ここ新橋と有楽町に各1店と、当時は計3店を経営していました。従業員は社員2人、アルバイト13人の計15人です。収支が特に厳しかった時期は有楽町を休業し、社員には雇用調整助成金で給与を補填。実家暮らしのアルバイト従業員には休んでもらい、当社の収入で生計を立てているフリーターの従業員が店に出られるようにしました。