個人の資産運用の一般論として、資金の使用目的別におカネを分けて運用することは非効率的だ。

 老後資金は長期だから株式投信で運用し、息子の学費は学資保険で、家の改築は2~3年後だから「資産分散型」のミドルリスクのファンドで、妻のおカネは定期預金に預け、夫は小づかいで株式運用をする、といった運用をすると、家計の運用の全体像が把握しづらいし、全体が適切な大きさのリスクにならない場合があるだろう(過小も過大もありうる)。

 また、こうした家計では民間生保の医療保険に入っていたり、かなりの金額の生命保険に入っていたりすることも多い。この種の保険は、ある種の安心感につながっている「高級消費」なので、ムダとばかりはいえないが、家計全体を見渡すと不要であって、保険料のうちの保障と貯蓄に回る部分の少なさ(たとえば6割以下)を考えると、結構な額の無駄金を払っている可能性が大きい。

 家計の全体を見渡すという意味では、ローンの問題もある。ローンの返済はノーリスクでできる預金や国債よりも高利回りの運用だから、運用に回せるおカネが生じた場合の第一候補だ。ローンの返済を別勘定と考えて、他のもので運用しているとチャンスを逸する。

 あらためてこんなことを思い出したきっかけは、じつは、中川自民党元幹事長が火をつけた「霞が関埋蔵金」論争のニュースだった。

 歳出削減策がなかなか出ない不甲斐ない民主党に代わって、なし崩しの消費税引き上げムードにストップをかけるよい問題提起だった。考えてみると、多数ある巨額な特別会計は、個人の家計で目的別に資金を区切るおカネの運用が起こすような非効率を招いている。