株式レポート
10月5日 18時0分
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金融緩和を強化する方法〜いくらでも残っている〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・本日(10月5日)、日本銀行は金融政策を前月から変更しなかった。ただ、今後、追加金融緩和を行う可能性は高いと考えている。9月19日レポートで、9月の日銀による追加金融緩和について解説したが、この時は、その前週にECB、FRBが強力な金融緩和を行い、日銀がそれに後押しされた面が大きかった。

つまり、米欧で金融緩和が行われ円高が進むリスクが高まっており、とりあえず買取基金の規模を増やして、米欧の動きに足並みを揃えたということである。このため、レポートでも指摘したが、市場では当日こそやや円安が進むなど反応したが、それは長続きしなかった。

・「日銀は、1ヶ月前に金融緩和を行ったばかり。そして、既にかなりの金融緩和を行っている」などメディアの解説を真に受けて、そう考えられる方もいらっしゃるかもしれない。ただ、日銀が金融緩和を強化する手段は、まだ残っているのが実状である。

・まずは、既存の枠組みを通じての金融緩和強化である。日銀の資産買入れ基金の規模は9月に80兆円に増えたが、これは主に買取期限を2013年末まで延長することで、基金の総額が増えたためである。9月にFRBはQE3を打ち出し、MBS購入を毎月400億ドル増額することを決定したが、これと同様、今後購入する長期国債などの毎月の資産購入額を増やす、金融緩和の強化ができる。

・なお、2008年のリーマンショック後の、中央銀行のバランスシートの規模を各国で比較すると、これまで日銀が拡大させた資産規模は、FRBやECBと比べてかなり見劣りする(グラフ参照)。今後、資産購入を増やし量的緩和を強化する観点で、日本銀行が、バランスシートを拡大する余地はまだあるということである。


・また、資産買入れの対象は国債だけではない。REITやETFなどのリスク資産を既に購入しているが、これらのリスク資産の購入ペースを増やす余地がある。FRBが、QE3で住宅ローン関連証券というリスク資産購入を再開「信用緩和策」を行ったが、これと同様のスキームと位置づけることができる。2012年4月末に金融緩和が強化された際、日銀はこれらの資産購入額を増やしている。

・更に、日銀による資産買入れの対象として、米国債などの外債を含めることを検討すべきとの意見が、政治家や有識者などから提案されている。この措置は、円高を是正するという観点からも、金融緩和の強化策としてかなり有効な手段である。

・一方、資産購入額を増やすだけではなく、米FRBのように、「期限を明示せず、資産購入額を増やし続ける」方針を明確に示すことも金融緩和の強化策になる。具体的には、米FRBは、「雇用が十分回復するまで」という条件を示したが、日本は「デフレから完全に抜け出すまで」という条件を明示することができる。

・更に、「今後の金融緩和を強める」メッセージ強化の点では、日銀が目指すインフレ目標を現在の+1%から、少なくとも他国同様に+2%に引き上げることができる。+2%という明確な目標を掲げれば、かつて日銀がゼロインフレに戻ったタイミングで金融引き締めに転じた(2000、06年)過去の失敗を防ぐことにつながる。

・また、日銀がインフレ目標として掲げている現行の消費者物価指数は、実際の物価下落を適切に反映せず、上方バイアスを持っているとの研究がある。このため、消費者物価よりも下落が顕著なGDPデフレーターを含め複数の物価指標の動向を参照しながら、インフレ実現をより確かにする政策運営が可能である。

・これまで挙げたように、日銀が金融緩和を強化する手段はまだ多く残っている。2012年2月に日銀は突然、+1%のインフレ目標を打ち出したが、その直前に米FRBがインフレ目標を掲げ、そして日本国内で政治圧力が高まった。

・こうした経緯を踏まえると、今回FRBがQE3を踏み出したことをきっかけに、上記に挙げたメニューの一部を採用し、日銀は金融緩和に踏み出す可能性が高い。本日は見送られたが、10月末の金融政策決定会合において、景気・インフレ見通しの修正と伴に、日銀は追加金融緩和に踏み出すと予想している。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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