不況や政権交代によって日本経済が不透明感に覆われるなか、株式相場は一進一退を繰り返している。市場はこの先どこへ向かうのか――。多くの投資家が頭を悩ませていることだろう。ユニークな投資方針で人気の「さわかみファンド」を立ち上げ、ファンド界の御意見番としても名高い澤上篤人社長は、そんな閉塞感を打破するかのごとく「買って買って買いまくれ」と檄を飛ばす。澤上社長にとって、不景気や政権交代は何の不安要因でもない。今こそ、10年先を見据えて優良株を物色できる「絶好の好機」だというのだ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

澤上篤人
さわかみ・あつと/1947年生まれ。愛知県出身。スイス・キャピタル・インターナショナルや山一證券のファンドアドバイザー、ピクテ銀行日本法人社長などを経て、96年さわかみ投資顧問株式会社、99年さわかみ投信株式会社を設立。安い手数料と長期投資を基本とする株式投信「さわかみファンド」を組成して順調に資産規模を拡大し、投資家の圧倒的な支持を誇る名物投信に育て上げた。著書やメディア出演多数。

――さわかみファンドは、1999年に日本初の独立系ファンドとして発足して以来、着実にファンを増やしてきた。純資産残高は2234億8300万円まで拡大し(10月30日現在)、今や人気株式投信の1つに必ず名前が挙げられるほどになった。何より注目されているのは、「暴落時こそ買いまくる」という澤上社長のユニークな投資スタンスだ。現在は、不透明感が漂う株式市場で、どのように動いているのか?

 基本姿勢は、このファンドの代名詞にもなっている「長期投資」だ。われわれ長期投資家は、短期的な経済動向に左右されず、10年先の世界全体を視野に入れて投資を行なっている。

 今回の世界危機では、金融収縮やデフレなど数々の不安が噴出したが、こんなひどい状況がずっと続くわけがない。近い将来、景気は必ず回復する。

 だからこそ私は、金融危機下でも決して「買い」の手を緩めなかった。一昨年(2007年)8月から今年2月までの間に、約1300億円買った。さすがにこれ以上は続かないが、おカネさえ工面できれば、まだまだいくらでも買う意欲がある。

 近い将来「上がる」とわかっている株がこれだけ割安になっているのに、今みすみすチャンスを逃す手はないのだから。