いま、日本に「新型インフルエンザ」襲来の危機が迫っているという。新型インフルエンザ――それは“鳥インフルエンザウイルス”がヒト型に変異したもの。「H5N1型」という強毒性の新型ウイルスだ。このウイルスが大流行すれば、未曾有の世界的大惨事となり、おびただしい数の死者はもちろん、経済・社会機能がマヒする可能性が高いという。その危機に対し、感染症の専門家である岡田晴恵氏は警鐘を鳴らす。

~【緊急特集】 第1回~

 現時点で新型インフルエンザの大流行が起これば、「最悪のシナリオとして、世界全体で1億5000万人(世界の推定人口は66億人)にも及ぶ死亡者が出る」との国連による試算がある。日本でも、厚労省によると64万人、オーストラリアの研究機関によると210万人の死亡が予測されている。

 新型インフルエンザは、単なる医療や公衆衛生の問題に留まらない。一地域、一国内の問題をも超えた、地球レベルでの社会危機管理、安全保障の問題なのである。

経済損失は世界で4兆ドル

 世界銀行や国連は、新型インフルエンザ発生時には、最初の1年間で世界全体で4兆ドル(世界GDPの3.1%に相当)の経済損失が出ると予測し、さらに死亡率が1%増加するごとに1.8兆ドルの損失が加わるとしている。

 米国の国家安全保障会議は米国での経済損失は8400億ドル以上との予測値を出している。カナダの経済団体は、北米だけで3万5000社の大企業が倒産し、1929年の世界大恐慌をはるかに超える経済への影響があるとの調査報告書を出している。特に中国などの経済発展の目覚ましい多くの途上国では、新型インフルエンザ対策が遅れているために、大きな経済破綻の発生が懸念されており、これが連鎖的に世界全体に大きな影響を及ぼすという。

 日本については、第一生命経済研究所が我が国のGDPが4.1%(20兆円)減少すると試算しており、オーストラリア農業省ではさらにその50%増しの6.1%減を予測している。しかし、我が国の政府調査機関がこのような調査結果を公表したことはない。

 さらに重要なことは、これらの影響は数年間にわたって続くと予測されているのだ。米国ではホワイトハウスの強い主導権の下に、すべての政府機関を巻き込んだ新型インフルエンザ準備計画の実施を進めているが、最近では、大流行が終息した後の経済復興、社会機能の回復に関する事前準備計画も検討されている。