地方の雇用を支える
工場が出て行く

 日本の企業がアジアなどに進出していっても、マクロ経済的には空洞化は起きにくい。この点について前回までに議論してきた。ただ、マクロ経済的にはそうだとしても、地域別に見ていけば、話はもう少し複雑だ。地方では空洞化が起きているからだ。

 地域あるいは地方という言い方は不正確であるが、ここでは農村地域、あるいは人口30万人未満のような中小都市を想定して、地方という言い方を使うことにする。

 全国どこに行っても、多くの農村地域や地方都市には工場がある。それは、大企業の出先の工場であったり、そこに部品を納める地場の中小企業であったりする。こうした工場は、地域の雇用を支える重要な役割を担っている。

 少し前に、静岡県牧之原市を訪れる機会があった。静岡県で最大規模の茶畑が広がる田園地帯で、その景色は素晴らしい。そうした景色を横に見ながら、迎えにきてくださった市役所の人に聞いてみた。「牧之原市の主要な産業は何でしょうか」と。

 当然、お茶やその他の農産物の名前があがるのかと思っていたら、「スズキ自動車、TDK、伊藤園」というメーカーの名前が出てきた。少し意外な感じがしたが、こうした企業が地域の雇用を支えているということなのだろう。

 この話は何ヵ所かに書いたことだが、日本の地域経済の実態を考える上で象徴的な事例であると思う。農村地域とはいっても、農業だけで食べていけるところは非常に限られている。多くの地域では、工場が重要な雇用の場を提供している。

 このことは、日本の農業者の多くが兼業農家であることと関わっている。要するに農業だけで食べていくことはできない。そこで農業は片手間になり、主たる収入は工場や役場や農協で働いて得ることになる。