先日の報道で、企業の買収防衛策に大きな変化がおきているというニュースが流れた。2008年に入ってから新たに買収防衛策を導入した企業のうち、株主に賛否を問う『株主判断型』が全体の4割を占めているという。昨年の2割と比べると明らかに急増しているのだ。

 昨年8月のブルドックソースの最高裁判決以降、買収防衛策を導入したかなりの企業が、「独立委員会+株主総会」というスキームであり、「独立委員会なしで、株主総会のみ」というものと合わせると過半数になっているのが現状だ。そういう点では、株主の意思を確認するという手続きを経ることが1つの流れになっている。

 一方、すでに買収防衛策を導入している企業が、今後どのように変化していくかはまだわからないが、取締役会の決議をもって対抗措置を発動するという事前警告型の買収防衛策を発表している企業も、株主総会で株主の意思を確認しないというわけではない。少なくとも株主の意思確認をしたほうがいいと思えば(もっと率直に言えば、賛同が得られる可能性が高ければ)、念のため株主総会で議案としてかける場合もある。

 しかしもう一方では、そもそも、株主総会の議案として成立するのかしないのか、という議論もある。本来であれば、会社法上の定款に「買収防衛策の案件について株主総会で株主の判断を仰ぐ」という条項を入れておけばいいわけだが、定款変更をする際には株主の3分の2の賛成が必要となるため、結構ハードルは高い。そういった定款変更をしていない状態で、買収防衛策の発動要件として株主総会で株主の意思確認をすべきかどうかという疑問もある。

「独立委員会」は
経営者の保身のための機関?

 これまで主流であった『取締役会決定型』では、買収防衛策の発動時には、第三者の専門家で構成する「独立委員会の勧告」を経て、「取締役会の決議」で実行するというスキームになっている。ただ、王子・北越事件において、北越製紙の第三者委員会が、王子製紙側にルール違反があったという理由で王子製紙を「濫用的買収者」として、発動勧告を決定したことに典型的に見られるように、いままでの独立委員会の活動を見る限りでは、どうしても経営者寄りのメンバーを集めてきて、経営者の判断を後押しするという印象が拭えない。結局、経営者の保身のための機関であると思われがちである。

 また、第三者といっても完全な「独立第三者」ではないケース(その会社と何らかのつながりのある弁護士や会計士など)や、本当に第三者であったとしても判断に適した人物が選ばれているのかと疑問を感じるケースもあり、問題点が多く指摘されている。つまり、独立委員会がきちんと機能していれば問題ないのだが、現状では独立委員会の判断が株主の意見を代弁しているというよりは、むしろ取締役会の意見を代弁していることが多い。