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小説じつは…経済研究所

じつは、経済学の目的は資本主義革命の解明だった!?
―経済学と経営学はどう違う?part2

佐々木一寿 [グロービス出版局編集委員]
【第7回】 2012年10月19日
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麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく連載小説。経済学と経営学の違いに迫るシリーズpart2の今回は、経済学の興りを訪ね300年前にまで遡ります。(佐々木一寿)

 さきほどから、主任の嶋野の携帯電話は鳴りっぱなしである。それもそのはずで、仕事をそっちのけで甥のケンジのそばにつきっきりだからだ。その中には、明らかに重要人物からと分かるものもあったが、嶋野はすべて「エマージェンシー」「コンティンジェンシー」といって後回しにしていた。甥の満足がなによりも優先であることが見て取れる。

 末席にとっては、嶋野の行動は予想の範疇ではあったが、それよりも着信のメロディがかなりヘビーなロック調であったことは想定外だった。付き合いが長くてなんでも知っているようでいても、意外な新発見はいつだってあるものなんだ*1、そう末席は気を引き締めた。ケンジのほうにも言い知れぬ漠とした違和感があるようだが、いまはそれどころではない様子だ。

*1 日本の「灯台下暗し」という趣旨のことわざは世界各地にもある

 「じゃあ、ケンジくん、経済学って、どんな出来事がきっかけで始まったと思う?」

 うーんと唸るようにケンジは考え込んだ。

 「なんかヒントはないんですか…」

 「ではヒントを。経済学は、ざっくり300年ぐらい前から始まりました」*2

*2 cf.『経済学をめぐる巨匠たち』(小室直樹著、2004年)

 ケンジの顔から察するに、それがなんのヒントにもなっていないのは明らかだ。

 「うーん。どうすれば金貨が貯まるようになるとかですかね…」

 さすが我が甥、いいセンを行っているな、と嶋野はご満悦だ。

 末席は続ける。

 「そうですね、それはとても重要なことです。金貨はなぜ貯まるのか。これを言い換えると、富はなぜ増えるのか、ということですね」

 ケンジはとりあえず安堵の表情を表しながらも、自身の答えに少し疑問も持ったらしく、続けて末席に問うことにした。

 「そんなこと。増えることもあれば減ることもありますよね、あまりにも常識的すぎて、学問になりうるんですか?」

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佐々木一寿 [グロービス出版局編集委員]

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業。大手メディア複合グループの出版部門勤務、報道系編集デスクを経て、グロービス入社。現在は、同社出版局の編集委員として、書籍・教材をはじめとする各種著作の企画・構成・執筆を担当。主に「グロービスMBA」シリーズ、「グロービスの実感するMBA」シリーズ(ともにダイヤモンド社刊)、「グロービスMBA集中講座」シリーズ(PHP研究所刊)の編集・執筆に携わる。


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麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく。

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