写真:菅義偉首相総務省接待問題について記者団の質問に答える菅義偉首相(左端、3月16日撮影) Photo:JIJI

菅義偉首相は、政治家が官僚をコントロールするためには「人事(権)」を使うことが有効だとの考えを持っているようだ。筆者もこの点には賛成するが、一方で人事を決める際には一つの約束事が必要だ。これは、政治家と官僚の間で決まる人事だけでなく、企業などあらゆる組織の人事においても同じことがいえる。その約束事とは何か。(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

国会や記者会見で違和感を覚える
「仮定の話」と「人事の話」

 国会での議論や記者会見の質問に対するやりとりを聞いていて、違和感を覚える回答が2種類ある。

 一つ目は、「仮定の質問にはお答えしない」という回答だ。「仮定」を置いた質問でも、答えられるものは答えたらいいではないかと素朴に思う。あるいは、「仮定」に全く実現性がなくて答えるに値しないと思うなら、そう思う根拠を述べて、仮定の実現性を議論してもいい。

 回答に違和感を覚えるのに続いて、質問者がその回答に引き下がる点にも違和感がある。そもそも「仮定の話」ができなければ、将来の問題について議論することが難しい。多くの重要な問題は、将来について複数の想定を持つのでなければ適切な意思決定や計画ができない。

 政治やビジネスだけでなく、人生の諸問題にあっても、例えば「メインシナリオが外れた場合の処置」を考えておくことが有用であり、分別のある人にとっては常識だろう。