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カツラーは今日も闘っているのだ!

「他人の視線」は、カツラーにとって最大級の敵である

小林信也 [作家・スポーツライター]
【第3回】 2010年2月12日
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他人の視線にカツラーは殺される!

 カツラーの敵は数々あるが、中でも強烈なのは、「他人の視線」だ。

 初対面で名刺を交換する。

 「小林信也です。よろしく……」

 頭を下げてから相手の顔を見ると、なぜか相手の顔が上(私の髪のほう)に向いている。

 胸がズキッとする。

(ばれたか……、カツラとバレたのか?)

 できるだけ平静を装う。間違っても、髪を触ったりしてはいけない。そんなタイミングで慌てて前髪を両手で直したら、ますます怪しい。だけど、気になる。

(乱れているのか、カツラがはねて、わかっちゃっているのか?)

 不安、不安、不安……。鏡を見たい、でも見るわけにもいかない。その辺にある鏡のようなものを必死で探す。目の前の相手に対する気はそぞろ。

 「ところで小林さん、最近はどんな仕事を」

 「え? あ、はあ……」

 それより問題はカツラだ。

 話す間にも相手の視線がしばしば上に向くなんて経験を、私はいったい何度重ねたことだろう。そのたび、不安に胸が締めつけられ、自己嫌悪にさいなまれる。

(こんなみっともない思いまでして、なんでカツラをかぶっているんだ)

 バレたかどうかよりも、バレてたとしたら何か決定的な理由があるはずだ。ご飯粒が口元についているくらいならまだ笑えるが。

(まさか、分け目のところ、カツラの白いベースが剥き出しになっているとか……?)

 みっともない、もしやそんな状態だったら死にたいくらい、恥ずかしい。ワタシ、カツラ、デス。と看板を下げているようなものだ。

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20代から薄げに悩み、ある日思い切ってカツラを選択した著者。が、スポーツライターなのにアウトドアを避けるようになり、テレビ出演も断わり、どんどん内向的に。カツラーの悩みと葛藤、業界の掟などを面白おかしく綴った一冊。

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小林信也 [作家・スポーツライター]

1956年新潟県長岡生まれ。慶応大学法学部卒。高校では野球部の投手として新潟県大会優勝。大学ではフリスビーの国際大会で活躍。大学生の頃から『ポパイ』編集部スタッフライターをつとめ、卒業後は『ナンバー』のスタッフライターを経てフリーライターに。2000年に自らカツラーであることを著書『カツラーの秘密』でカミングアウト。著書は他に『高校野球が危ない』『子どもにスポーツをさせるな』『カツラーの妻(おんな)たち』など多数。


カツラーは今日も闘っているのだ!

カツラーとは、カツラをつけている人を意味する愛称です。カツラーは人知れず、日々闘いの連続。闘う相手は、汗・風・水(温泉)、他人の視線(たぶん自意識過剰)、恋人・妻・家族、そして自分自身。そんなカツラーの哀しくも闘う姿をご紹介しましょう。

「カツラーは今日も闘っているのだ!」

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