復権の幻想#4写真:つのだよしお/アフロ

菅義偉首相が総務省を通じて携帯大手に強く迫った「携帯電話料金の値下げ」。NTTは率先してNTTドコモを通じて大幅値下げを仕掛けて業界を驚愕させたが、即座にKDDIとソフトバンクの競合2社が追随。再び3社寡占が続き、新規参入した楽天や、格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)が追い込まれる事態になった。結局、値下げで得をしたのは、消費者以上にNTTだったのではないだろうか。特集『NTT帝国 復権の幻想』(全5回)の#3では、官製値下げの弊害を読み解く。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

菅政権に同調したNTT
グループ挙げて値下げを推進

「国の期待には応えなくちゃいけない」

 2020年11月下旬、東京港区のNTTドコモ本社で、NTTドコモの井伊基之社長(当時は副社長)は携帯電話料金の値下げへの思いを周囲に語っていた。

 もちろん値下げの狙いは、KDDIやソフトバンクへの契約流出を食い止めて、新規の契約を増やすという戦略上の理由にある。それでも、政権の要望に応じることも重要だ。

 携帯料金の値下げは菅義偉首相の看板政策。菅氏が官房長官時代の18年8月に「携帯料金は4割程度下げる余地がある」と発言したのを受けて、澤田純・NTT社長は、当時の連結子会社ドコモに値下げを指示するなど、NTTグループを挙げて国の政策に同調する姿勢を見せていた。

 その澤田社長から、ドコモのトップとして送り込まれたのが井伊社長だ。ドコモが大胆な値下げに乗り出すことは、モバイル事業の収益強化を狙うNTTグループ全体の課題であり、政府からの期待値も高い。

 そんな中で、ドコモが20年12月3日に発表したのが、20ギガバイト(GB)のデータ容量で月額2980円(税別、以下同)という、当時としては衝撃的な携帯料金プランの「ahamo(アハモ)」だ。

「大きな一歩を踏み出した」。アハモ発表の前夜、菅首相は、ドコモの値下げ方針を高く評価する考えを周囲に語ったという。発表会の2日前に就任したばかりの井伊社長は「勝てる価格帯」と胸を張った。

 それ以降、「官製値下げ」に誘導される形で各社が攻防戦を繰り広げた結果、ドコモが競争の主導権を握り続けている。当初は痛みを伴う値下げのように見えたが、最後に笑ったのはドコモら「3キャリア」だったのだ。

 どういうことか。競争の構図を解説しよう。