音楽・映像ソフトレンタル最大手のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、創業者で代表取締役社長の増田宗昭氏に次ぐナンバーツーの取締役兼COO(最高執行責任者)として、外部からキャドセンター社長の柴田励司氏を招聘。6月20日に就任する。

 2006年3月に純粋持ち株会社に移行したCCCには、これまで増田氏を含め7人の社内取締役がいたが、増田氏と財務担当責任者だけを残して、他の5人は退任。柴田氏はわずか3人となる社内取締役の1人として、グループ全体に大きな影響力を持つこととなる。柴田氏は38歳で米系コンサルティング会社の日本法人(現マーサージャパン)社長に就任。07年3月に退任した後は、経営危機に陥っていた建築関係のコンピュータグラフィックス制作大手キャドセンターに移り、わずか1年で同社を再建させた実績を持つ。

 今回の役員人事は、創業オーナーが外資系出身のすご腕経営者を右腕として招いたという構図だが、CCC社内からは「なぜ業績好調の今、わざわざ外部からCOOを入れなければならないのか」と柴田氏招聘をいぶかる声も上がる。

 その疑問への答えは、経営幹部の構成にあるのだろう。同社新卒入社の生え抜き幹部はまだ30代。57歳の増田氏とは親子ほどの年齢差がある。46歳の柴田氏は彼らにとってちょうど兄貴分で、絶対的な発言権を持つ増田氏と現場をうまくつなぐことが、柴田氏に期待される役回りのようだ。

 柴田氏は、ここ10年こそ華麗な職歴だが、職業人生はたたき上げ。大学卒業後は京王プラザホテルに入社し、レストランの皿洗いや宴会場のサービス係など下積みを経験。33歳でマーサーに転職するまでの10年間は地味なホテルマンだった。そうした経験もあってか、「部下の話をよく聞き、組織のすみずみにまで気を配る」(柴田氏を知る人たちの人物評)。こういう面も、増田氏は買っているようだ。

 CCCは、「TSUTAYA」に続く成長事業が育っておらず、7期連続の経常増益でも株価が低迷しているのが増田氏の悩みの種。事業の執行は柴田氏に任せ、自らは成長事業育成に専念しながらも、次世代の経営者を育成していくのが増田氏の腹づもりと見られる。

(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 田原寛)