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アマから直接メジャーリーグへ。
「田沢問題」が突いたドラフト制度の盲点

――「職業選択の自由」は「紳士協定」を超えられるか?

相沢光一 [スポーツライター]
【第31回】 2008年10月7日
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 日本プロ野球界を揺るがしている「田沢問題」。ドラフト制度の根幹にも係わるこの問題を受け、日本プロ野球組織(NPB)は田沢に続く選手が出ないよう、アマチュア3団体に対して要望書を提出した。

 何のことか分からない人のために、この「田沢問題」の概略と経緯を説明しておこう。

「直接メジャーへ行きたい」
プロ野球界を震撼させた田沢の宣言

 「田沢」とは社会人野球チーム・新日本石油ENEOSに所属する田沢純一投手のこと。最速156キロのストレートを武器に持つ本格派で、今夏の都市対抗野球での優勝にも貢献した。現在のアマチュア球界最高の投手と見られており、ドラフト会議では複数球団から1位指名を受けることは確実だった。

 問題は、その田沢が日本のプロ野球をソデにしたことから起こった。都市対抗野球後に行なった記者会見で、メジャーリーグに挑戦する意思を表明。日本のプロ野球12球団に対して、ドラフト指名を見送ることを求める文書を送付したのだ。

 野茂をはじめとして日本のプロ野球からメジャーに挑戦した選手は数多い。また、日本のドラフトにはかからなかったが、プロになる夢を捨てきれず、「日本がダメならアメリカで」と米・マイナーリーグに挑戦する選手(西武のG.G.佐藤など)もいた。

 しかしドラフト候補が、日本のプロ野球を経由することなく“直接メジャーに”行こうとするのは田沢が史上初。これにプロ野球界は騒然となったのである。

日米の「紳士協定」に亀裂?
メジャーが事前接触の可能性も

 日米のプロ野球界には「紳士協定」がある。「互いのドラフトは尊重する」というもので、両者のドラフト候補選手を獲得することは避けようという暗黙の了解である。だが、今回の田沢のように「本人の希望」なら話は別。もしメジャー側がそれを拒めば、「職業選択の自由」を侵害することになる。自由の国アメリカとしては、自らチャレンジしようとしている選手を受け入れるのは当然という論理になるのだ。

 ちなみにメジャーリーグでドラフトの対象となるのは、本国アメリカ、カナダ、プエルトリコの選手のみ。それ以外の国の選手は自由に獲得できる。当然、日本の選手はドラフトの対象ではない。よって上記の「紳士協定」は、事実上「日本のアマチュア選手(ドラフト対象選手)には手を出さないでくださいね」という日本側からメジャー側へのお願いだったといえる。

 野茂やイチロー、松井秀、松坂など日本からメジャーに移籍した選手たちの活躍で、日本選手はメジャーでも通用することが証明された。そんな選手がドラフトを通さずに獲得できるのはメジャーにとっては非常においしい話である。そこで、アマチュアの有望選手に密かに接触し、水面下で契約を確約したうえで「メジャーを希望します」と本人にいわせればいい、というやり方も考えられるのである。

 田沢は「紳士協定」に触れることを懸念してか、メジャーからの交渉はないと語っていたが、記者会見を開きメジャー挑戦を明言したところを見ると、メジャーの球団から何らかの接触があったと考える方が自然だ。そんな田沢が先例となって、アマチュアの有望選手が続々とメジャーリーグを目指すようになったら、日本のプロ野球は空洞化してしまうというわけである。

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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