日本男子はなぜかくも小奇麗になったのか?<br />女性顔負け?増殖する「綺麗男」(きれお)の生態「モテてる男は、こだわり派!」のキャッチフレーズと共に、資生堂の男性化粧品のラインナップと誕生秘話を紹介している「資生堂メンズコスメヒストリー」

 なんだか、世の中の男性が小綺麗になった――。そんな声が、多くの女性陣から上がっている。筆者は毎朝8時台、混雑のピークに達するJR中央線で都心まで通勤しているが、猛暑となった今年の盛夏ですら、男性ビジネスマンの汗臭さが気になることは、ほとんど皆無であった。

 それを裏付けるように、筆者の仕事仲間の男性はほぼ全員、市販の「汗ふきシート」をデスクに常備し、暇さえあれば顔や首回りを拭っていた。汗臭さとは無縁の、クールなメンソールの香りが、周囲にいつも爽やかに漂うほどだ。

 この猛暑特需を受け、冷感・清涼製品などを扱うマンダムでは、今年8月、株価が連日高値を更新し、好業績を収めている。なぜ男性陣は、かくも清潔かつ綺麗好きになったのか?

 リクルートが主宰する「Beauty総研」では、最新の美容リサーチや美容研究、美容レポートなどを行なっている。同研究所が20~40代の男性を対象に行なった調査で、「肌・髪・ひげ・ボディの手入れやケアなど、自分の外見を整えることに関心がありますか?」との問いに、25~29歳では実に78.0%が「関心がある」「やや関心がある」と答えている(2012年1月10日発表)。この数値は、年齢が上がるごとに少しずつ低くなっていくが、45~49歳の層でさえ、55.0が同様の回答をしている。

 この調査で最高水準の値を示した25~29歳という世代は、男性用・女性用の区別なく、リップやローション、洗顔料など、自分に合った美容アイテムを使用することにあまり抵抗を持たないという。

 彼らが美容への関心が高い傾向にあるのは、「時間とお金が自由に使える」「イケメン・ギャル男など、男性ファッション誌に街の男子が登場するようになった」「女子の進学率の上昇で、周囲に女性がいる環境が普通になった」といった理由があると分析している。そして同研究所は今年、彼らのような美容に関心が高い、若手清潔男子を、「綺麗男」(きれお)と命名した。

 一方、綺麗好きになったのは、若手ばかりではない。中高年をターゲットにした化粧品市場も競争を激化させている。セブン&アイ・ホールディングスの傘下であるネット通販会社・セブンネットショッピングでは、資生堂と協力体制を組み、今年4月に「資生堂」専門店を開設。約2100アイテムを販売したところ、メンズコスメカテゴリーがなんと約30%の伸びを示したという。

 これを受けて先月には、「資生堂メンズコスメヒストリー」を新設。高度経済成長期の1960年代に誕生した男性化粧品の誕生ストーリーを、時代背景と共に紹介するものだ。

 このように、老いも若きも美を追求し始めた日本男子だが、どこまで行きつくのか、楽しみな感はある。その一方で、審美眼を磨き上げた男性の増殖は、女性陣にとっては脅威でもあり、正直複雑な心境になる……というのが、彼女たちの偽らざる本音ではないだろうか。

(田島 薫/5時から作家塾(R)