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日銀の追加金融緩和〜コンセンサスとサプライズ〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

10月23日レポートで、最近の為替市場の円高修正の動きは、(1)夏場からの米長期金利の上昇で、既に拡大していた米日長期金利差が5月初旬の水準まで戻っている、(2)米日金利差(=世界経済安定)で80円前後へのドル高円安は説明できる、ことをお伝えした。


もちろん、10月30日に予定されている決定会合で日銀が金融緩和に動く期待が強まったことも円安が進む一つのきっかけになった。2012年2月のように、FRBのQE3に見劣りせず、日銀が金融緩和を強化し脱デフレの時期が早まるとの期待が浮上すれば、米国金利の動きと関係なく80円台半ばまで更に円安が進む可能性がある。

そして、先週から日銀の金融緩和に対する観測報道が相次いでいる。先日(10月24日)日経新聞によるエコノミストに対する調査に筆者も回答しているが、回答者全員が金融緩和、具体的に資産買入基金での長期国債などの5〜10兆円増額を予想。そして、筆者を含め、回答者11名中7名がETF(4月2000億円増額)とREIT(4月100億円増額)などのリスク資産の買い入れ増額を予想している。市場の金融緩和への期待が高まる中で、これが最低ラインとなるだろう。


先週の日経新聞による「日銀、追加緩和検討へ」の観測記事の後に、今週産経新聞が「政府、日銀に20兆円の追加緩和要求」と買入基金が大きく増える可能性を報じた。そして、同日に、ロイター通信が「物価上昇率1%が展望できるまで基金の残高を維持検討」との政策方針を打ち出す可能性を報じている。

筆者が先のアンケートで回答した、5〜10兆円の国債買入れを中心とした金融緩和は、4月末と同様の追加緩和が行われるだろうとの推測であり、必ずしも確固たる根拠があるわけではない。仮に産経新聞が報じるように、「政府が、大幅な資産買入れを要請し」、その通りに金融緩和(資産買入れ)の規模が拡大すればサプライズだろう。金融緩和に消極的だった日銀が、政治的要請で金融緩和を強化したと解釈される。政治状況が変わる中で、今後も、政府・日銀が一体となり金融緩和強化が続くとの期待が高まる。

そして、長期国債などの買い入れ規模と同様に重要なことは、9月にFRBが打ち出した、QE3(=大規模資産買入れ)のように、期限や規模を決めず「無制限」(オープンエンド)で続ける方針を表明するか否かである。日銀は現在、2013年末まで資産買入れを続ける予定を示しているが、FRB同様に、期限や規模を決めず資産買取でバランスシート拡大を続ける方針を表明すれば、それは「脱デフレが実現するまで」追加金融緩和が続くことを意味する。

仮に日銀がこうした政策に転換すれば、多くの人が「いずれはインフレが訪れる」と予想するようになる。中央銀行と市場のコミュニケーション強化によって、市場や人々のインフレ期待に働きかける効果が働くということである。

筆者を含めて、日経新聞による調査では、今回日銀がFRBのQE3同様のフレームワークを打ち出すとは予想していない。インフレ期待に働きかける強力な金融緩和のコストを、日銀は依然大きいと考えているとみられるためである。こうした見方が覆されて、日銀が資産買入れを増やし続ける姿勢に転換すれば、「20兆円規模の金融緩和」同様にサプライズとなるだろう。

なお、先に紹介したロイター社が報じた「物価上昇率1%が展望できるまで基金の残高を維持検討」について、「FRBのQE3同様の事実上の無制限緩和」と記事では評価されている。ただ、基金の残高を「維持」するだけならそれは金融緩和強化ではなく、日銀のバランスシートを保つだけである。このロイターの観測報道どおりなら、FRBのQE3と同じ強力な政策というより、物価目標1%を目指して従来の枠組みで金融政策が運営される姿に近い。これでは、サプライズとならないだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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