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岸博幸のクリエイティブ国富論

コンテンツは無料という時代の流れにどう抗うか?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第2回】 2008年8月8日
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 前回説明したように、クリエイティブ産業は日本で最大の成長産業となり、様々な面で日本の将来に貢献できる可能性を秘めています。

 しかし、同時に、製造業や一般のサービス産業とは異なる点が多く、産業の育成や強化という観点からは難しい産業であることも事実です(例えば、クリエイティブ産業の一部である芸術や伝統工芸などは、日本ではそもそも産業の体をなしていません)。

 そして、特に難しいのは、知的財産がコアコンピタンスを規定する産業であるため、デジタル化やインターネットの普及の影響を大きく受けるということです。そこで、今回から数回にわたり、デジタル化とインターネットがクリエイティブ産業に及ぼす影響を整理してみたいと思います。

 デジタル化とインターネットがクリエイティブ産業にどのような影響を及ぼすかについては、様々な議論があります。良く言われるのは、「かつては通信や放送のインフラを持つ者が最も強かったが、インターネットの普及により流通経路が増え、“Content is king”、即ち、コンテンツを持つ者が最も強くなった」という主張です。

 しかし、インターネット先進国である米国での議論をフォローしていると、そうした議論も修正されつつあるように見えます。ここでは、特に重要と思われる新たな議論を2つ紹介します。

 一つは、ロング・テール理論で有名なクリス・アンダーセンが発表した“Free: why $0.00 is the future of business”という論文です。要約すると、そこでは、以下の主張がなされています。

・ インターネット上では情報(=コンテンツ)の処理・保管・伝送にかかるコストが限りなくゼロに近づき、人間が行う作業もソフトウェア化されてコストが限りなくゼロに近づく。

・ 一方で、ネット上では貨幣価値が希少性を計る唯一の手段ではなくなり、評価(reputation)や注目(attention)といった要素(外部経済効果)の重要性が増大する。

・ その結果、ネットに関わるあらゆる産業では、マスメディアのビジネスモデル(無料で番組を視聴者に提供して広告から収益を得る)のような無料ビジネス(free business model)が広がるであろう。

 要は、インターネットに関わることで限界コストが低減し、既存産業はビジネスモデルの変革を迫られると言っていると考えていただければ間違いないと思います。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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