最大の「思考ノイズ」がモチベーション

 私は年間100回以上、セミナー、講演をやっているが、セミナー受講者に「悩み」を聞くと、ダントツで「モチベーション」と答える人が多い。

「モチベーションが低いから行動できない」
「モチベーションを上げる方法を教えてほしい」

 とアンケートのコメント欄に書かれる。

 このコラムを読んでいるあなたも、意欲を持って仕事に取り組みたい、充実した人生を送りたいと考えているかもしれない。
そのために、どうしたらモチベーションを高められるか、真剣に悩んでいる人もいるだろう。

 モチベーションという概念は、比較的新しいものだ。

 統計によると、この言葉がメディアで取り上げられ、一般的に使われるようになったのは2001年以降のようだ(坂口孝則著『モチベーションで仕事はできない』参照)。

 1990年に社会に出た私は、当時「モチベーション」という言葉を使ったことがなかった。

 新しい言葉が増えるということは、選択肢が増えるということにも繋がり、人を迷わせる。行動スピードが遅くなり、決断できなくなるのだ。

 そして何かを選択したあと、後悔する確率も増えていく。

「始められない」「続けられない」「やりきれない」原因の正体

 近年「モチベーション」という言葉がこれほどまで浸透し、市民権を得てしまうと、仕事で成果を出すための要素の一つとして「モチベーション」がある、などという、勘違いをしてしまう人も出てくる。

「どうも最近、仕事に打ち込めないと思っていたら、モチベーションか……私もそのモチベーションとやらが落ちているのかもしれない」

 という新たな思い込みが増える。

 新たな思い込みは「思考ノイズ」に姿を変える。

 行動を「始められない」「続けられない」「やりきれない」原因のほとんどが、この「思考ノイズ」なのだ。

 少し考えてみればわかるはずだ。

 自分に「自信」のある人が、「モチベーションが低いからやる気が起きない」とか、「本当にこの仕事に意味があるのだろうか」などと、グチグチ、ゴチャゴチャ考えるだろうか。

 あーでもない、こーでもないと脳内でつぶやきながら物事に取り組むのはやめよう。

 この「思考ノイズ」をいかに減らすかが、「絶対達成マインド」を鍛えるうえで、とても重要だ。

 脳は「刺激―反応モデル」なので、外部から刺激を受けると反応する。脳が刺激を受けたとき、心にさざ波が立つ。その違和感を言語化すると、「思考ノイズ」が発生する。

 それを言葉にしてしまうと、それを意識してしまい、なかなか変えることができなくなる。
これが行動の妨げとなるのだ。

 人間の気分に浮き沈みがあってあたりまえだ。

 そこに一喜一憂する必要などない。

 そういう人は、ある意味、真面目すぎるのだと私は思う。

 仕事に精を出すことができないときがあり、そこには理由があるのだと思い込む。

 その理由を探求していったら、どうやら「モチベーション」というものが深く関わっているらしいなどと、真面目すぎる人ほと考えてしまうものだ。

 気分が乗らなくても、あまり真面目に考えることなく放置して、目の前の仕事をすればいい。

 そうすればわかる。

モチベーションなどとは関係なく仕事をこなせるということを。