キング牧師のスピーチはなぜ記憶に残るのか?

――よいプレゼンをするうえで、他に心がけるべきポイントは何でしょうか。

 これは特に女性のスピーカーに心がけていただきたいのですが、声の大きさやトーンは注意を払うべきポイントです。女性が叫ぶように話すと、聴衆には「いやな性格だ」と思われてしまいかねませんから。また、男性が握りこぶしをつくって大声を出すと権威が感じられますが、同じことを女性がやってもうまくいきません。

 もうひとつ重要なのは、間のとり方です。マーティン・ルーサー・キング牧師の有名なスピーチ「I Have a Dream(私には夢がある)」を聴いていると気づくのですが、彼は“I have a dream.”と言って長い間を置きます。これはプレゼンの修辞法のひとつで、強調を効果的につくり出す役割を果たしています。何かを言って間を置くことで、いまあなたが言ったことを聴衆にじっくり考えさせるのです。

 スピーカーとしてのキング牧師の特徴に関してもうひとつ言えば、彼は自分が見たことを言葉で表現するのが非常にうまいスピーカーといえます。現代では、プレゼンで視覚に訴えるにはもっぱらスライドを使いますが、もしキング牧師がスライドを使っていたらどうだったでしょう?きっと、あれほど美しいスピーチにはなっていなかったでしょうね。

 キング牧師はスピーチの中で、情景を想起させる言葉や比喩を多く用いています。多くの人はコミュニケーションの際にあまりこうした言葉を用いませんが、比喩を効果的に用いることで、聴衆にくどくどと時間をかけて説明することなく、パッとイメージを伝えることができます。

――伝えたいメッセージはあるけれど、どうやってプレゼンしたらよいかわからないというとき、最も重要なことは何でしょうか?

ザ・プレゼンテーション』の中で詳しく説明していますが、「自分のプレゼンを聴いて、聴衆にどのように変わってほしいのか」を具体的に考えてみてください。そこを起点にプレゼンの構成を練っていくのです。

 人は本来的に変化に抵抗を示す生き物です。「いまのままでも不足はない、どうして変わる必要がある?」という具合です。それを変えさせるのですから、あなたのアイデアにはどれほどのインパクトがあり、それを受け入れて行動した先にはどのような未来が待っているかを示してやることが大切です。


【編集部からのお知らせ】
反響続々、大増刷出来!!
ナンシー・デュアルテ著『ザ・プレゼンテーション

◆内容紹介

フェイスブック、グーグル、アル・ゴア氏……<br />世界のオピニオンリーダーを陰で支える<br />「プレゼンの達人」の仕事術定価:2,625円(税込)
造本:B5判変型・並製・256頁
ISBN:978-4-478-01696-1

共感、感動、鳥肌が立つような興奮――。心が動かされるプレゼンテーションには、ある“共通する仕掛け”があります。
世に名プレゼンターと呼ばれる人たちは、自身のプレゼンにその仕掛けを巧みに織り込むことで社会的なムーブメントを起こし、商品の魅力を伝え、革新的なアイデアを広めているのです。
本書は、世界的な著名人やオピニオンリーダーたちのプレゼン制作を手掛けてきた著者が、一流のプレゼン手法を明かした話題作。
誰もが知る有名なプレゼンから、日本ではまだ知られていない感動スピーチまで、数々のケーススタディを詳細に分析する著者の手腕はまさに圧巻です。
仕事でプレゼンを行う機会の多いビジネスパーソンはもちろん、学生、講師、コピーライティングやアートディレクションに携わるクリエーターまで、「聴き手の心に響くプレゼン」をめざすすべての方に。
たんなるハウツーではない本物のプレゼン手法が本書には詰まっています。

※『ザ・プレゼンテーション』の公式サイトはこちら

絶賛発売中![Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店] [楽天ブックス]

◆主要目次
第1章 心を動かすプレゼンテーション
第2章 神話や映画に学べ
第3章 聴衆を知る
第4章 旅の計画
第5章 内容を練る
第6章 構成を考える
第7章 記憶に残る何かを伝える
第8章 改善の余地はどこにでも転がっている
第9章 世界を変えよう
終章 インスピレーションはどこからでも得られる