向き合わなければいけないのは、事実

やりたいことがたまたま会社だった。<br />だから、自然体で起業ができた。<br />【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)

村上 今の20代は、良くも悪くもガツガツしないんですよね。でも、上の世代の人から見れば、戦っていないように見える。挑戦することをやめたんじゃないか、あきらめているんじゃないか、と。それでは、ダメじゃないか、と。

 でも、本当は内に秘めたる気持ちはあるんです。それが外に出ていないだけで。私もガツガツはしていませんが、内に秘めたるものは熱いです。こだわるところはこだわりますし、やっぱり相応の努力はします。

キム 村上さんに感心するのは、純心さを持ちつつ、柔軟であることです。そして、最後は自分がしっかり決断されるでしょう。僕も大学でアントレプレナー概論を2年ほど教えていたんですが、感じたのは、学生の思いが強すぎることでした。なかなか他者の声に耳を傾けられない。一方で、厳しい指摘をされると、完全に萎縮したり、自信を失ったり、誰かに簡単に順応してしまったりする。極端なんです。

 村上さんは、最終的には自分で決断を下すという強さの一方、自分には弱さも未熟さもあって、学びも必要だという柔らかさもお持ちですよね。それを精神的なところだけではなくて、日常の行動レベルで実践されているところがすばらしいんです。

 もちろん最年少上場はすごい記録ですが、一方で正直に申し上げると、この人はまだ完成していないな、とも感じました。これから先、いろんな刺激を自分のものにして、進化されていくんだろうと。最年少上場で注目を浴びているわけですが、今後の活躍という視点でも、注目すべきだと思っています。

村上 自分でも、まだまだだなと思うところが、たくさんあるんです。発信の力が弱いな、とか、目標設定と課題設定能力は経営者としてもっと必要だな、とか。人として成長するという意味でも、まだまだ足りないところは山のようにあります。そもそも、まだ25歳ですので(笑)。これから進化し続けたいです。でも、今の段階でも1年前のインタビューとかを見ると、ちょっと恥ずかしかったりするんです。

キム 自分が自分自身を恥ずかしく思うタイムラグが短ければ短いほど、自分の成長スピードは高いということを意味します。それは、常に自分自身と向き合っていることだから。一般的には、自分が成長したかどうか、過去の自分が幼稚だったかどうか、気づくのに数年かかったりしますが、それだけすばやく痛感されているのは、すばらしいことだと思います。

村上 実は、常にそうありたいと思っているんです。ちょっと前の自分を振り返ってみて、恥ずかしいと思える。「わかってないなぁ」「若いなぁ」と言える。そんなふうに言い続けられるのって、いいなぁと思っていまして。

 やっぱり向き合わなければいけないのは、事実ですよね。まずは昨年12月にマザーズに上場したわけですが、事実としてどうか、を常に自分に突きつけています。客観的に見たときには、やっぱり売り上げは全然ですし、利益も全然ですし、社会に与えている影響も全然だ、という自覚があるんです。

 さらに10月からは東証一部上場になったわけですが、世の中の人が認識している東証一部上場のすごさと、今の自分たちには、間違いなくギャップがある。その感覚を自分自身で相当強く持っています。まわりでいくら賞賛されたとしても、実際はどうなのか。まわりでなく、自分の視点で、自分の頭で考えたらどうなのか。まだまだじゃないか、という認識が強くあるんです。