感情で生まれた会社が、理性によって強くなった

やりたいことがたまたま会社だった。<br />だから、自然体で起業ができた。<br />【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)

キム 実は感情も、最終的には自分の選択なんです。本来であれば、理性が主人になって、感情を奴隷にして、感情の選択に対して理性を介在させることで、感情の暴走を防ぐことができる。ところが、多くの人は感情に対して理性を介在させない。ここで、感情を言語化するというのは、理性化するということです。感情に理性を介在させる典型例が言語化なんです。

 感情が表に出てしまって、状況が悪化してしまうことはよくある。感情が乱れる可能性は、いつでもどこでも存在するからです。でも、村上さんは、そこにきちんと理性を介在させているのではないですか。外から見ると穏やかに見えますが、おそらく内面では大変なスピードで理性が感情を処理しているのではないかと思います。

村上 なるほど、感情を常に言葉にしようとしていたのは、理性によって抑えようとしていたから、なんですね。まさに、私が言語化されてしまいました(笑)。思えば、理性を働かせることは、強く意識していたように思います。尊敬される方からは、すべてのものに意志を持て、と言われていて、それを行うことで、感情と理性のキャッチボールもしっかり行えるようになったんです。感情から始まった会社が、理性を働かせたことで、より強くなったんだと思っていました。

キム すべての感情や行動に対して自分を理解しようとしたら、ヘトヘトに疲れてしまうんじゃないか、と思う人も多いんですが、意識的にそういうことを繰り返し、習慣化していく中で、自分が意識して処理しなくても、自然に直感的に意思判断ができていくようなメカニズムが生まれるんだと思うんです。

意識の世界で行動を起こし、それを繰り返していく中で、無意識の世界に移植されて、感覚になっていく、と言い換えてもいいかもしれない。村上さんは、そうやって蓄積された膨大なデータベースがあるんだと思います。

村上 思えば、子どもの頃からそうだったかもしれません。いつも、「なぜ?」という意味を求めてしまったからです。どうして生きているんだろう、とか、どうしてこの選択をしたんだろう、とか、なぜテニスを好きなのか、とか。

 そうすることで、自分が何に喜びを感じるのかを、おおよそ把握することができたんですね。ここから“幸せから生まれる幸せ”という経営理念も出てきたんです。ただ、喜びが把握できてしまったことは、ネガティブな面もあって、喜べないことはしなくなってしまうわけです。例えば、私は旅行があまり好きではない。これまでの体験の中でも、楽しいとは思わなかったから。でも、決めつけてしまっていることで、自分の幅が狭まってしまっているんじゃないか、とも思うんです。

キム いや、それは好き嫌いなので、仕方がないところだと思います。一般的に10代、20代は、発散の時期で、深く考えずに、いろいろなものを体験したり、経験することが中心になることが多いんですね。ところが、幸か不幸か、村上さんは早い段階で、自分のミッションや、個人的にやりたいことがはっきり見えてしまった。だから、生活の大部分がそこにフォーカスされてしまったんだと思うんです。

 そうなると、大学の仲間がサークルだ、合コンだ、と言っても、そこには意味は見出せないわけです。それよりも、お客さまのためにサイトをこう直したい、ということのほうが、断然、大事なことで、楽しいことになるわけです。そうした集中がずっと続いてきたんだと思うんですね。でも、それでいいと思いますよ。

 もうちょっとして、いろんな意味で少し余裕が出てきたときに、変化も起きていくと思います。人間って、自分が体験したものしか、自分の世界にできないところもありますし。それまでは、自分を信じてくれている人たちのためにも、今感じている使命を追い求めることが大切だと思います。

村上 実は、やっぱり経験が狭くていろんな体験をしたいので、月に一度、新しいことをやってみようと考えたんです。これは、ビジネスのため、でもあります。ビジネスを創る側として、いろんな人の感情を知っているのは、大事だと思いましたので。でも、早速ひとつ試してみたんですが、やっぱりどうにもまだピンと来ないみたいで(笑)。

(後編掲載は11月2日(金)の予定です)


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「対談 媚びない人生」バックナンバー

第1回 媚びない人生とは、本当の幸福とは何か 『媚びない人生』刊行記念特別対談 【本田直之×ジョン・キム】(前編)

第2回 大人たちが目指してきた幸福の形では、もう幸福になれないと若者たちは気づいている【本田直之×ジョン・キム】(後編)

第3回 日本人には自分への信頼が足りない。もっと自分を信じていい。【出井伸之×ジョン・キム】(前編)

第4回 世界を知って、日本をみれば「こんなにチャンスに満ちあふれた国はない」と気づくはずだ。【出井伸之×ジョン・キム】(後編)

第5回 苦難とは、神様からの贈り物だ、と思えるかどうか【(『超訳 ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(前編)

第6回 打算や思惑のない言葉こそ、伝わる【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)

第7回 いつが幸せの頂点か。それは死ぬまで見えない【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(前編)

第8回 国籍という枠組みの、外で生きていきたい【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(後編)

第9回 「挑戦しない脳」の典型例は、偏差値入試。優秀さとは何か、を日本人は勘違いしている【茂木健一郎×ジョン・キム】(前編)

第10回 早急に白黒つけたがる人は幼稚であると気づけ【茂木健一郎×ジョン・キム】(後編)


 
やりたいことがたまたま会社だった。<br />だから、自然体で起業ができた。<br />【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)

 

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【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

やりたいことがたまたま会社だった。<br />だから、自然体で起業ができた。<br />【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)
定価:1,365円(税込)
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2

◆ジョン・キム『媚びない人生
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」

将来に対する漠然とした不安を感じる者たちに対して、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したのが本書『媚びない人生』です。韓国から日本へ国費留学し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者。その経験からくる独自の哲学や生き方論が心を揺さぶられます。

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