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カツラーは今日も闘っているのだ!

カメラは、カツラーの天敵である

小林信也 [作家・スポーツライター]
【第7回】 2010年3月11日
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 いまでこそ、あまり気にしなくなったが、不自由なカツラーだったころ、カメラは最大の天敵のひとつだった。知人たちと集まった席で、あるいは和やかな飲み会で、

 「はい、笑ってえ!」

などと声をかけられ、カメラが自分に向いたときはサーッと血の気が引く。身体も心も凍りつき、表情が強張る。

(ばれる! やめてくれー)

 心の中では悲鳴が響く。その動揺を表すまいと繕うが、そもそも写真を撮られるのは苦手だから、救いようがない。

 カメラがなぜカツラーの天敵かといえば、写真に撮られると、普段以上に「あ、カツラだ」と、わかりやすくなる。光の反射と吸収の具合なのか。カツラの髪がベタッとつぶれた感じで自然なふんわり感がない。絵具で塗りつぶしたような一様さというか、妙なのだ。

 第二に、否応なしに「わかる」という現実を突きつけられる辛さ。鏡の前で必死に整えたカツラが、行動するうちに乱れたり、襟足の髪がはねたり、いかにもカツラっぽくなっている。

 普段は自分で見えない分、目を背けて過ごせる。が、写真はごまかせない。自分を客観視し、現実を直視することになる。僕の場合、たいていはひと目で「カツラだ」とわかる具合に映っていた。

 ごくまれに、(これならカツラとわからない、自然に写ってるじゃないか)と胸をなでおろしたこともあるが、全体の3割にも満たなかった。

 その恐れは、快適なカツラーになったいまも少し残っている。いま使っている編みこみ式でも、髪をきちんとセットせず、いい加減な手入れで外に出たとき写真を撮られたら、どこかカツラっぽさがにじみでる場合がある。サイドから襟足にかけての髪の流れが、なんとなくカツラっぽい、とか。

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20代から薄げに悩み、ある日思い切ってカツラを選択した著者。が、スポーツライターなのにアウトドアを避けるようになり、テレビ出演も断わり、どんどん内向的に。カツラーの悩みと葛藤、業界の掟などを面白おかしく綴った一冊。

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小林信也 [作家・スポーツライター]

1956年新潟県長岡生まれ。慶応大学法学部卒。高校では野球部の投手として新潟県大会優勝。大学ではフリスビーの国際大会で活躍。大学生の頃から『ポパイ』編集部スタッフライターをつとめ、卒業後は『ナンバー』のスタッフライターを経てフリーライターに。2000年に自らカツラーであることを著書『カツラーの秘密』でカミングアウト。著書は他に『高校野球が危ない』『子どもにスポーツをさせるな』『カツラーの妻(おんな)たち』など多数。


カツラーは今日も闘っているのだ!

カツラーとは、カツラをつけている人を意味する愛称です。カツラーは人知れず、日々闘いの連続。闘う相手は、汗・風・水(温泉)、他人の視線(たぶん自意識過剰)、恋人・妻・家族、そして自分自身。そんなカツラーの哀しくも闘う姿をご紹介しましょう。

「カツラーは今日も闘っているのだ!」

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