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スリの現行犯は八〇歳と七二歳の姉妹
お婆ちゃんの人生って、何だったんだろう……

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第8回】 2012年11月2日
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 大阪で“女スリ”が現行犯逮捕された。姉妹のスリ師だった。

 驚いたのは――、姉の駒崎恵美子が八〇歳、妹の妙子が七二歳という年齢だったことだ。妹は古希を過ぎ、姉は傘寿である。にわかには信じられない事件だった。

 事件は先月二九日、梅田の阪急百貨店の地下一階、食料品売り場で買い物客の鞄から約七〇〇〇円が入った財布を妹の妙子が抜き取ったところを、警戒中の捜査員に現行犯逮捕されたというもの。

 阪急百貨店は増床工事の途中だったが、八割の店舗が先行開業し、地下一階の売り場はにぎわっていた。姉妹にすれば“かき入れどき”だったのだろうが、スリ犯専門の捜査員が警戒していたことには気づかなかったらしい。

 姉妹を逮捕した大阪府警曾根崎署・捜査三課の捜査員によると、全国のデパート等々で五〇年以上もスリを繰り返し、二人は“駒姉妹”の異名で知られる常習犯だったとのことだ。前科前歴のほどは定かではないが、過去には何度かパクられているのかもしれない。

 それにしても、だ。

 近ごろは動きが鈍くなった姉の恵美子がもっぱら“見張り役”を務め、妹の妙子が財布を抜き取る役割分担ができていたというが、七二歳と八〇歳である。姉は昭和七年生まれで、八つ違いの妹は一五年生まれ。

 姉妹の“スリ歴”は五、六〇年と大雑把なものだが、すると、姉の恵美子は二十代のころからスリを常習にしてきたことになる。姉が妹をスリの世界に引き込んだのか、それとも、妹が姉を誘ったのか。

 私が気になるのは、姉妹はスリで生計を立てていたのかどうかということだ。

 傘寿を迎える年齢であれば、中学生か高校生になるくらいの孫がいてもおかしくはないのだが、ともすれば、姉妹には姉妹以外の家族はいないのかもしれない。姉妹はともに未婚のまま現在の年齢を迎え、他人の懐から抜き取った財布を頼りに暮らしてきた――。

 だとすれば、私はとても悲しくなる。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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