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「時価会計見直し」論まで出る、サブプライムの痛手の深さ

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第26回】 2008年4月16日
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 G7会議は、サブプライム問題の影響により「世界経済の見通しは悪化した」とする共同声明を採択し、閉幕した。その直前となる4月12日の日経新聞に、サブプライムをめぐる金融業界の現状について、興味深いニュースがいくつか載っていた。

 最も目を引いたのが、「時価会計に見直し論」という見出しで、時価評価を見直すべきとの声が、欧米の金融監督当局から出てきているという記事だ。国際通貨基金(IMF)は時価評価適用見直しを検討すべきだとする報告書を発表し、バーナンキFRB議長も「流動性の低い市場では時価評価会計によって不安定になることがある」と表明した。フランスの保険会社アクサのCEOも、「単純に時価会計を当てはめると事態を悪化させる」と指摘する。
 
 バーナンキ氏は一つ現象を説明しただけで、時価評価の原則を曲げるべきだとまで言及したわけではないが、保険会社の経営者の発言のトーンは、バブル崩壊後の日本の金融機関の経営者の言い分と似ていて、時価評価を何とか逃れたいという意図が滲み出ている。

会計の透明化を先導した
米国が見直しを叫ぶ皮肉

 筆者は、時価で評価するという大原則はやはり曲げないほうがよいと考える。もちろん、どのような「時価」が適切かという問題は議論があっていいが、それを市場での取引価格よりも保有者にとって有利な価格に歪めることは不適切だろう。適切な時価とは何か、と考えると、それは、「現実に売れる値段」である。場合によっては、市場で取引された実績の値段よりも、適切な価値は安くなることがあるだろう。

 投資対象の価値を正確に計算することは、時に難しい。とくに証券化商品の場合は、本来の価値が見えにくくなっている。だが、正しい評価計算ができないということは、本来、投資判断などできないということだ。これはもともと適切な投資対象ではなかったということであり、それでも投資する場合は、経営に大きな影響を持たない程度のポジションにとどめるべきだった。
 
 しかし、こうした当たり前の原則から多くの金融機関やファンドが大規模に逸脱してしまったところに今回のサブプライム問題の難しさがある。

 いずれにせよ、評価自体を修正することで乗り切ろうというやり方には問題がある。資産の評価額は、経営の内部者にはわかっても、投資家や株主は情報を持っておらず、著しい情報の非対称性が生じる。時価評価を甘くすることを経営者に許すと、経営者は責任を免れるために評価を歪める可能性が大いにある。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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