2008年2月29日バーナンキFRB議長の「小規模な金融機関の破綻があるかもしれない」という無責任な発言を受けて、ニューヨーク市場で一気にドル安と株安が加速した。

 為替は1ドル103円に突入し、株式市場でもダウ工業株30種平均が315ドル安と、金融市場にまたまた動揺が走った。週明けの東京市場でも日経平均は610円安と全面安の展開となり、ようやく回復していた市場のセンチメントも一気にしぼんでしまったようだ……。

バーナンキ発言の意味とは?

 アメリカ景気の後退懸念から、マネーの流れは金や原油などの商品市場に流れ込んでおり、景気後退とインフレが同時に進むスタグフレーションに陥る可能性は、このままいけば否定できないだろう。株価はそれを見越して下げている。

 かつて日本がバブル崩壊を経験した際、不動産価格の下落と株価下落を放置し、利下げと財政出動という小手先の手法で切り抜けようとして失敗したが、その際、公的資金注入を早い段階から唱えたのは、当のアメリカであったはずだ。

 今回のアメリカの住宅バブル崩壊にともなうサブプライムとモノラインの問題を見る限り、解決策は明確だ。まず、不良債権を金融機関本体から切り離すこと。そして、公的資金で処理するという外科的施術が最も有効だ。

 もちろん、FRBもアメリカ政府もこのまま放置すると、日本の二の舞になることはとっくにわかっているのだが、今年は運悪く大統領選挙の年である。今の現状で公的資金を投入することは、まだ国民のコンセンサスが得られる状況にはないようだ。

 先日の「小規模な金融機関の破綻があるかも知れない」という発言は、実は公的資金注入が必要だという議長からアメリカ国民へのメッセージだったのかもしれない。さらなる資産価格の下落や住宅の差し押さえが増えれば、当然、公的資金注入を待望する声が高まってくるはずである。ブッシュ政権はその時期をうかがっているのではないだろうか?