橋本聖子氏Photo by Masato Kato

新型コロナウイルスの感染が続く中、東京オリンピック・パラリンピックの開催準備が続くことに対して批判がある。過去7回の五輪に出場したオリンピアンでもある五輪組織委員会の橋本聖子会長はインタビューで、万全な感染対策を敷いた上で、困難を乗り越えて開催を目指す意義を強調した。上下2回でお届けする。(作家・スポーツライター 小林信也)

あきらめないからこそ安心が見える
五輪はいつも感染症との闘いだった

聞き手・小林信也(以下、小林) 多くの国民は、東京五輪で感染が広がるのではないか、と心配しています。コロナ禍でも東京オリンピック・パラリンピックを開催する意義は何か。IOCや日本政府、協賛企業などのお金儲けのために国民の命を犠牲にするな、という声もあります。

橋本聖子会長(以下、橋本) 東京大会を早い段階であきらめていたら、いろんな面で解決がもっと遠かったと思います。安心というのは、最初からあきらめるのでなく、具体的に取り組んでこそ見えてくるのではないでしょうか。

 過去のオリンピックは、どの大会も感染症と闘っているんです。2016年のリオ大会の時にはジカ熱で現地は大変でした。私たち選手団もものすごく気を使いました。私は選手団長でしたから、自国の選手を守るため独自に対策もしなければいけないと、選手村の部屋中にできるだけの対策を施して、選手たちの安全を守りました。リオでもどれだけ大変だったか、日本のみなさんには伝わっていないかもしれません。

小林 ジカ熱は、あまり影響がなかったのかと思っていました。

橋本 ジカ熱が怖いから来なかった選手もいます。でも、行ってみてわかったことがたくさんあります。行って、わかったから安心できた。行かなければわからないことでした。

 自転車の大会でも、周辺地域でエボラ出血熱があって、対策して行った経験があります。すべての国において、どの地域も、常に感染症との闘いになっている。