両大統領候補の接戦が日々伝えられるなか、実際の有権者は両候補をどう見ているのか。年齢も職業も違う多くの人々の声を聞いてみると、今回の選挙戦を通して両者が争点をぶつけ合えば合うほど、有権者は二者択一を迫られ、国が分断されていく様子が浮かび上がってくる。それはワシントンの政界でも広がっている。(在米ジャーナリスト・津山恵子)

分断が深化する構造

「米国は正しい方向に向かっていると思うか」

 米国人の有権者に最近、こうした質問をぶつけてみた。世論調査に必ずある質問だが、かなりクリアにその人が何を支持し、何を望んでいないのかが、よく分かる。

 筆者が得た有権者の声を、いくつか紹介しよう。

「ロムニー候補が大統領になれば、米国を支える中間層は無視され、彼は米国を正しくは導いてくれないと思う。オバマ大統領の経済対策は少しスローだったが、健康保険制度を整えてくれたし、彼のアプローチを支持します」(ナンシー・カートン、ヘルスケア・マネージャー、53)

「オバマ大統領のもと、金融機関は救済され、人々は路頭に迷った。ロムニー候補が大統領になれば、政府の歳出をもっと減らして、私たちが救済されると思う」(エレイン、学生、21)

 もっと複雑な見方をする人もいる。

「オバマ大統領がウォール街を救済したことや、国民皆保険を目指した健康保険制度改革には満足していない。しかし、一個人として、政府は人種や宗教にかかわらず、どんな市民をも守るべき立場にあると思っている。ロムニー候補にはそれができないだろうから、オバマ大統領を再選させなくてはならない」(スティーブ・マックス、オバマ選挙事務所ボランティア、73)