経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第17回】 2012年11月13日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【名越稔洋氏×武田隆氏対談】(後編)
『龍が如く』誕生秘話
“不自由さ”を残したことで生まれた大ヒットゲーム

ヒット商品の仕掛け人が語る制作秘話はおもしろいものだと相場が決まっている。株式会社セガのヒットメーカー、名越稔洋氏の場合もまたしかり。
名越氏といえば、全世界500万本以上を売り上げたゲーム『龍が如く』の生みの親。この作品が誕生する過程にはどのような経緯があったのだろうか?
お話をうかがっていくと、『龍が如く』はコンセプトメイキングやターゲットユーザーの選定に一日の長があっただけでなく、ある点に徹底的にこだわり抜いていることが重要なカギを握っているのだとわかる。では、その「ある点」とは……?前編にひきつづき名越ワールド炸裂の対談は、ファンならずとも一読の価値ありだ。

繁華街をコンセプトにした時点で、勝算があった『龍が如く』

武田 私は名越さんが『龍が如く』の開発に入る前、その構想を聞かせていただいたことがあります。でもその時、「繁華街を自由に歩き回れるゲーム」と聞いて、どんなゲームかまったく想像ができませんでした。

名越稔洋(なごし・としひろ)
株式会社セガ 取締役CCO(Chief Creative Officer)。1965年6月17日生まれ AB型。山口県下関市出身。1989年セガ入社後、鈴木裕のもとCGデザイナーとして『バーチャファイター』シリーズの制作などに参加。1994年初のプロデュース作品『デイトナUSA』を発売し、ドライブゲーム史上に残る大ヒットを記録。2005年に大ヒットとなる『龍が如く』を手がけ注目を集める。『龍が如く』シリーズは全世界500万本以上のセールスを記録。

名越 それだけ聞いても、訳がわからないですよね(笑)。設定もストーリーも、それまでのゲームとはぜんぜん違うものでしたから。

武田 正直、お話をうかがったときは、こんなにヒットするゲームになるとは思えませんでした(笑)。「まだこれは世の中にはないものだから、つくってみないとわからない。自分はこれに賭ける」と名越さんがおっしゃっていたのを、よく覚えています。

名越 じつは「実在の繁華街」をコンセプトにした時点で、半分勝ったと思っていたんです。

武田 確信があったんですね。

名越 ゲームで何かの世界観をつくるときには、みんなが知っているものをテーマにするのが鉄則なんです。でも、メジャーなものは、たいていもう誰かが先につくってるんですね。

 そこで、ふと自分がかつてホームにしていた飲み屋街のことを思い出しました。そういう猥雑な繁華街をゲームの世界で再現したらどうなるだろうと思ったんです。繁華街って、今までメインテーマとして扱われたことはほとんどないけれど、みんなが知っていて興味もあるはず。「知らない世界をのぞいてみたい」という下心をくすぐるものがあるだろう、と分析していました。あとは踏み込んで、どれだけリアルに再現できるかがキーになるな、と。

 また、『龍が如く』というゲームの特殊性は、マーケティング的に徹底的に絞り込みをしているところにもあります。ゲームをつくっていると、いろいろ考慮しなきゃいけないことが出てくるんですよ。たとえば、海外展開を見据えて、舞台を海外にしたほうがいいんじゃないかとか。女性ウケを考えて、もっと主人公は親しみやすいイケメンのほうがいいんじゃないかとか(笑)。そういう意見は、もう全部突っぱねることにしました。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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