経営×ソーシャル
識者に聞く ソーシャルメディア進化論
【第17回】 2012年11月13日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

【名越稔洋氏×武田隆氏対談】(後編)
『龍が如く』誕生秘話
“不自由さ”を残したことで生まれた大ヒットゲーム

不自由をデザインすることで、自由を感じさせる

名越 バーチャルをつくるうえで、現実そのままではダメですが、現実からスタートするというのは必須です。軸はやはり現実にあるんです。

『龍が如く』では、実在の繁華街の風景などをかなり正確に模しています。道路の縁石の高さなど、調べてみてわからないところは、実際に測りにいくということを繰り返していました。写真などを撮っていると怪しまれるから、ササッと逃げたりしながらね(笑)。

武田 それでいうと、戦闘シーンなどで、ただの背景だと思っていた路上のパイロン(カラーコーン)や看板などがつかめるのがおもしろいですよね。『龍が如く』が自由度の高いゲームだと言われるのもわかります。

名越 いや、ほんとは不自由なんですよ。

武田 え!?

名越 よく「自由なゲームですよね」と言っていただくんですが、本当はできないことのほうが多い。

武田 不自由をデザインすることで、自由を感じられるようになる、ということですか?

名越 そのとおりです。また、作品性を守るための不自由、というのもあります。たとえば『龍が如く』は、自分から人を殴ることは絶対にできない仕様になっているんですよ。相手に絡まれないと、ケンカは始まらない。だから、暴力ゲームと言われるのはいささか心外なんですよね。

 また、子どもが死ぬシーンと薬物が出てくるシーンも絶対に使わない。これは『龍が如く』というゲームの作品性を守るためには、譲れない部分です。いま、7作目の公開を控えていますが、シリーズを通して一度も許したことはないです。

 すべてが自由だと、強いメッセージを保ったゲームではなくなってしまうんです。クリエーターによって考え方はいろいろあるかもしれませんが、ゲームというのはプレイヤーに決められた設定、役割、そしてルールがあって初めて成り立つものだと私は信じています。

武田 それは、企業コミュニティの運営にも通じるかもしれません。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


識者に聞く ソーシャルメディア進化論

史上最も多くの人々がつながり合った今、私たちを取り巻く社会はどう変化していくのか? NTTドコモ、セブン&アイ、資⽣堂ジャパン、ライオン、森永乳業をはじめ300社超のマーケティングを支援してきたクオン代表 武田隆氏が、各分野の有識者とともに変わりゆくインターネット時代の未来を読む。

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