株式レポート
11月6日 18時0分
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米大統領選挙を巡る2つの誤解 - 村上尚己「エコノミックレポート」

米大統領選挙の投票が本日(11月6日)行われるが、これを巡る様々な見方が報道されている。まず、先週末からメディアで目立つのは、両候補の支持率がほぼ同じなため、「接戦が続いている」という報道である。ただ、報道で伝えられるほど、「接戦」とはもはや言えない可能性がある。これが1つ目の誤解である。

アイオワ大学が運営している電子先物市場では、大統領選挙の結果について市場取引が行われているが、同市場では直近のオバマ勝利の可能性が約75%まで上昇している(グラフ参照)。10月の候補者討論会の後に、ロムニー候補が巻き返した。しかし、足元ではそれ以前の「オバマ勝利」のムードが高まっていた状況に戻りつつある、と「大統領選挙にベットしている」人たちは認識しているということである。


もう1つの誤解が、為替市場で良く耳にする、「ロムニー勝利でドル高が起きる」との見方である。(1)現在の超低金利政策に批判的な共和党政権で金利が上昇する、(2)ビジネスフレンドリーな共和党政権で米国株高をもたらす、などが「ロムニー誕生=ドル高」の根拠となっている。

ただ言うまでもないが、ロムニー大統領誕生で、このストーリーが実現するかどうかは、足元で回復の兆候が増えている米経済の復調が続き、それがドル高・金利上昇をもたらすか次第である。足元で再び始まりつつある経済復調を後押しする「現実的な経済運営」が実現しなければ、ドル高や株高は続かない。

ポイントは、いわゆる「財政の崖」への対処を次期大統領がどのように対処するかだが、この点について、10月11日レポートで紹介した。実際には、両候補ともに、「財政の崖」という目先の問題に対して、どう対処するか不透明な部分が大きい(表参照)。


ロムニー候補は富裕層への減税延長を言明しており、共和党政権の場合、「財政の崖」に伴う増税幅が小さくなるが、それはGDP対比で0.3〜0.5%に相当する。ただ、ロムニー氏や副大統領候補のライアン氏は、「財政健全化」を金科玉条のように唱えている。こうした硬直的な政策運営の場合、「財政の崖」の片方である歳出削減幅が行き過ぎて、富裕層減税延長を上回り、南欧諸国が苦しんだ「緊縮財政」による景気縮小圧力が大きくなる可能性がある。「財政の崖」には至らなくても、緊縮財政で成長率が減速すれば、共和党政権であってもドル高は起きない。

もちろん、オバマ続投の場合は、少なくともこれまでの富裕層への減税政策がなくなる分、経済成長には下押し圧力がかかる。また、キャピタルゲイン増税が、株式市場の需給に影響をもたらす可能性もあるだろう。これらが行き過ぎれば、経済成長を阻害する。

つまり、どちらが勝利するかよりも、今後訪れるリスクがある「財政の崖」に対して、景気回復を阻害しない「現実的な対処」ができるかどうかである。要するには、どちらが勝利しても相応のリスクがある、ということである。

また、可能性は高くないとしても、仮に共和党政権が誕生して、本当に現在のFRBの金融緩和策が批判される状況になり、将来、「緊縮財政+金融引締め」が同時に採用されれば、米経済失速の現実味はより高まる。つまり、オバマ政権では想定できなかったリスクシナリオが、「ロムニー誕生」ではじめて想起されるシナリオがありえるということである。

政治の問題が、経済動向に大きく影響することは、過去2,3年の欧州債務問題を巡る混乱が示すとおりである。この意味で、米大統領選挙は大きなイベントだが、共和党・民主党どちらの勝利が望ましいかは、今後の議会との折衝を含めた政治情勢次第である。「2つの誤解」を前提に、大統領選挙後のシナリオに予断を持つリスクは大きいのではないか。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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