宇多田ヒカルの「ノンバイナリー」告白って何?今さら聞けない新語の正体Photo:Chris Weeks/gettyimages

歌手の宇多田ヒカルさんが、自身のインスタグラムで「ノンバイナリー」であることを明らかにした。「ノンバイナリーって一体何?」 と思った人も多いかもしれない。近年、性自認や性的指向について、これまで考えられているよりも多種多様であるという理解が広まりつつある。その一方で、カタカナの言葉が多くて、何がなんだか……という声も聞かれる。(フリーライター 鎌田和歌)

LGBT、10年前はよくわからなかった
多数派の無知

 まず恥ずかしい話の告白からになるが、筆者は10年ほど前まで、トランスジェンダーと、レズビアンやゲイの違いをよく理解していなかった。トランスジェンダーは性自認の問題であり、レズビアンとゲイは性指向の話だが、それがいまひとつ曖昧だったのだ。「LGBT」「性的マイノリティー」などとくくられる人たちである……といったぼんやりとした認識しかしておらず、それ以上の興味や関心を向けていなかった。

 はっきりと理解したきっかけは、知人がトランスジェンダーだと知ったことだった。

 トランスジェンダーとは、生まれたときに峻別された性別と、自身が認識する性が異なる人のことを指す。私の知人は、生まれたときの戸籍上の性別は男性だったが、その後、女性として生きることを決めた人だった。彼女が女性として生活し始めてから出会った筆者は、そのことに気づいていなかった。

 その後、彼女から「“トランスジェンダー女性(トランス女性)”はそうと気付かれることが多いが、“トランスジェンダー男性(トランス男性)”は気付かれないことも多い。トランスジェンダーといっても、実はトランス女性とトランス男性の抱える問題は同じではない」といった具体的な説明を聞いて、初めて目の前に広がった世界があった。

 性自認や性指向といった言葉の意味は理解していても、具体的な事実や当事者の視点にまったく無知だったことにそのとき思い当たったのだ。

 当事者にとっては毎日の現実なので向き合わざるを得ないが、当事者でない者にとっては興味、関心を持たなくても生きていけてしまう。無知なままで困ることがない。それがマジョリティーということなのだろう。