「健康保険の自己負担割合は、1割から2割、3割と引き上げられてきました。今後も4割、5割になることは否定できないとボクは思っています。だから、民間の医療保険がますます重要な時代になってきます」

 この発言の主は、民間の生命保険を販売している代理店の職員だ。

 たしかに、1980年代以降、会社員の健康保険は、自己負担割合や高額療養費の限度額が段階的に引き上げられてきたし、「4割に引き上げるべきだ」と提案した官僚や学者もいる。

 超高齢化社会に突入し、厳しい健康保険財政も報じられている。医療を取り巻く環境によい材料が見当たらない今、自己負担割合の引き上げはまんざら嘘ではないようにも思える。実際、そうしたセールストークを聞いて、不安に駆られて民間の保険に加入した人も多いのではないだろうか。

 しかし、筆者は健康保険の自己負担割合は、そう簡単には引き上げられないと考えている。その4つの根拠をあげて、保険代理店の「ボク」の考えに対抗してみたいと思う。

根拠1
引き上げられてきたのは会社員の自己負担だけ。
会社員家族や自営業世帯はむしろ負担が減って平等化している

 健康保険は、加入者から集めた保険料をプールしておいて、病気やケガをした人が必要な医療を受けられる国の制度だ。

 事前に保険料を払っているのに、さらに窓口でも負担をしなければならないのは、純粋な保険の仕組みとしてはおかしなことだが、お金を払わずに好きなだけ病院や診療所を利用できると、必要以上に医療が使われる恐れもある。モラルハザードとして窓口負担を導入しているというのが国の説明だ。