「本当の理由はほかにあるんです。猪木さんって経営コンサルタントだったんですよね。社長にヘッドハンティングされたって聞きました。一流のコンサルタントがどんなことをするのか、興味がわいたんです。だから、もう少し続けてみようと――」

 ヒカリはゴミ箱から決算書を拾ったことも、千の端店が深刻な状態にあることも言わなかった。ガマンして千の端店にいれば、猪木が赤字の店舗を立て直すのを間近に見ることができる。これこそコンサルティングの実習ではないか、とヒカリは思った。

「猪木君がロミーズの社長にヘッドハンティングされただって?」

 安曇はおかしさをこらえるのに苦労した。猪木が経営企画室長に応募した際に、安曇は履歴書を見たロミーズの社長から相談されていたのだった。

「猪木さんがそうおっしゃってました」

「彼がね……。クラークシップの件はわかった。社長に頼んであげよう」

「ホントですか?」

「社長がウンと言えば、猪木君だって拒否はできないからね。ボクから電話しておくよ」

「ありがとうございます」

 ヒカリは頭を下げると、気になっているあのことを聞いてみることにした。