赤字の意味

「先生、すごく初歩的な質問なんですけど、赤字ってどういうことなんでしょうか?」

 安曇は驚いた表情を浮かべた。

「初歩的?とんでもない。奥の深い質問じゃないか。君の店は赤字なのかね?」

「いいえ、勉強していて疑問がわいたんです」

 ヒカリはあわてて言い訳した。

「その疑問とやらを聞かせてくれないか」

「つまり――、売上高から費用を差し引いた差額がマイナスの状態が赤字で、赤字になると会社が危険になると私は思っていました。ところが、よく考えると、とてもおかしなことに気づいたんです。会社は赤字をなくすために費用を減らそうとしますよね。でも、いくら費用を削減しても、いつまでたっても赤字から抜け出せない会社があります。なぜなんでしょうか?」

 ヒカリは千の端店をイメージしながら聞いた。

 すると安曇は満足げにうなずいて、こんな話をはじめた。

「赤字というのは、売上と比べて費用が多すぎる状態のことだ。だから、費用を削れば赤字は減り、黒字になるとつい考えてしまう。だが、現実は黒字になることもあるし、赤字が増えてしまうこともある。君はその答えを探そうとして管理会計のテキストをめくったのに、答えは見つからなかった。違うかな?」

 ヒカリはうなずいた。