つい最近まで1ドル=120円くらいだと思っていたら、気がつくと1ドル=90円台の円高になっている。相変わらず為替市場の動きは激しい。今回の為替の動きを、一言で表すとすれば、円高というよりも、むしろドル安というほうが現実に近い。世界の基軸通貨であるドルが、昨年のサブプライム問題の表面化をきっかけに、ほぼ全面安の展開になっている。

 円高傾向は、わが国の輸出企業の収益にマイナスの影響を与えることが懸念される。ただ、今回のドル下落には、米国経済が抱える構造的な問題が潜んでおり、その現象の背景にある要因を正確に理解することが必要だ。

日本のバブル崩壊とそっくり
サブプライム後の米国経済

 今回のドル下落の引き金は、米国のサブプライム問題の表面化だ。住宅価格が上昇することを前提に、金融機関は積極的に住宅ローンを貸し込んだ。住宅ローンを増やすために、所得が少なく、信用力が低い人にまでローンを貸した。

 ところが、昨年、前提としていた住宅価格の上昇がピークを打ち、下落傾向に転じた。そうなると、住宅を転売することでローンの返済を目論んでいた人たちは、お金を返すことができなくなる。その結果、住宅ローンの焦げ付きが増加し、金融機関に多額の損失が発生する。

 また、そうした住宅ローンを証券化したRMBS(住宅ローン担保債券)を保有する投資ファンドは、大きな損失を抱える羽目になる。それは、金融機関の機能を低下させ、貸し渋りなどが起きる。その結果、必要な分野に資金が回り難くなり、実体経済の足を引っ張ることになる。

 RMBSなどの証券化商品の価格が急落したため、当該商品を保有する一部の投資ファンドなどの財務内容は急速に悪化した。それが金融機関の資本を毀損し始め、金融市場の信用収縮につながった。その結果、全米第5位の大手証券会社であるベア・スターンズが実質的な破綻に追い込まれた。現在の米国は、90年代後半の日本とそっくりな状況になっている。経済が減速すれば、その国を代表する通貨が下落するのは、むしろ当然といえる。

米国が抱える
構造的な「借金体質」

 もう少し大きな目で見ると、米国経済は構造的な問題を抱えている。それは、米国の過剰消費の体質だ。米国は、自国で作るよりも多くのものを消費する。足りない分を輸入で賄うことになる。その結果、毎年、着実に貿易赤字=国の借金が、雪だるまのように膨らむのである。米国が気前よく、海外から品物を買ってくれることは、わが国や中国などにとっては大きなメリットだ。しかし、米国は毎年蓄積する借金の負担に苦しめられることになる。