株式レポート
11月8日 18時0分
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【US Market Update】Vol.1 米国株式市場、急落の背景 - 広木隆「ストラテジーレポート」

先般プレスリリースでお知らせした通り、当社ではこれから米国株の取り扱いを約2800銘柄と大幅に増やす。それに伴って投資情報も拡充を図っていきたい。これまで「ストラテジーレポート」のなかでも米国株式市場について言及や分析、考察を行ってきたが、今後は米国株についての見解は独立したレポートの体裁をとってお伝えする。市況の動向は「US Market Update (US マーケット・アップデイト)」、より戦略的な分析は「US Market Strategy (US マーケット・ストラテジー)」でお届けしていきたいと考えている。



「上手に思い出すことは非常に難しい」と小林秀雄は言った(『無常ということ』)。まさにその通りだ。昨日の米国株式市場は急落し、NYダウ工業株30種平均は300ドルを超える大幅安となった。これほどの下げはいつ以来かとすぐには思い出せなかった。調べると昨年11月9日に389ドル安を記録して以来、ほぼ1年ぶりだ。たった1年前のことがすぐに思い出せないのだから、4年前のことはなおさら覚えていない。2008年11月、前回の米国大統領選投開票日の前後の動きと、今年ここまでの動きはよく似ている。2008年11月3日の月曜日(大統領選挙投開票日の前日)は様子見でダウ平均は5ドル安。4日火曜日(大統領選挙投開票日の当日)は300ドルを超える大幅高となった。それが一転、5日の水曜日(大統領選挙投開票日の翌日)は486ドル安と急落。大統領選挙の翌日としては最大の下落率となったのである。

もちろんリーマンショックから2カ月も経っていなかった当時の状況は今と違い過ぎる。そもそも米国経済はリセッション(景気後退)のど真ん中で、相場の弱気材料には事欠かなかったわけである。しかし、改めて指摘したい点は、米国大統領選挙という4年に一度の大イベントは、それだけ相場を大きく動かす材料になるということである。

昨日の米国株の急落は、大統領選・議会選を終えて上下両院の多数派政党が異なる「ねじれ」の継続が確定したことから、オバマ政権と議会が「財政の崖」問題の解決で妥協するのは容易でないとの見方が改めて広がったことが背景だとの解説をよく目にする。しかし、なぜ「改めて」なのか。「財政の崖」についてのリスクはこれまでも、さんざん市場の懸念材料とされてきた。議会のねじれが続くことも、予め分かっていたことだ。もっと云えば、大統領選の行方すら、「稀に見る接戦」とメディアが喧伝する一方で、市場の見方はオバマ優勢にずっと傾いてきた(この点については11月6日付「エコノミックレポート」ご参照)。つまり、すべてが織り込み済みの結果通りとなって、それで改めて「財政の崖」問題を嫌気、というのは筋が通らない。

4年前の例を見ても、大統領選がいかに大きな相場を動かす材料になるかは想像に難くない。昨日の急落は、一大イベント通過のタイミングで、それまでたまっていたポジションが一気に解消された一方で、新規ポジション構築の動きが交錯し、解析不可能な取引の連鎖が複合的に起きたためではないかと考える。

急落したのがいわゆる「ロムニー銘柄」である。ロムニー候補が掲げるエネルギー政策の思惑で買われていたピーボディーエナジーが9%超下落、アルファ・ナチュラル・リソーシズとアーチコールが12%超の急落となった。一方、テネットヘルスケアとHCAホールディングスがそれぞれ9%超上昇するなど病院株が大幅上昇。こちらはいわゆる「オバマケア」、オバマ大統領の医療保険改革により恩恵を受けると見られる銘柄群だ。反対に採算悪化懸念でユナイテッドヘルス・グループやエトナなどの医療保険株は売られた。また、ドット・フランク法など金融規制は継続されるとの見通しから金融株が大幅安、国防費削減の思惑でロッキード・マーチンなども下落した。

選挙結果がある程度織り込まれていたとするならば、こうした動きが一気に起こるというのもおかしいではないか、という指摘もあろう。しかし、選挙結果が判明するぎりぎりまでベット(賭け)を引っ張っていたポジションもあっただろう。その投げが一斉に出たのだろう。また、イベントを「トリガー(引き鉄)」として発注するコンピュータによる自動売買プログラムも、あちらこちらに組まれていたのではないかと想像する。

この筆者の仮説が正しければ、今晩の米国株式市場は下げ止まるだろう。なぜなら「トリガー」となるイベントは通過してしまったのだから。東京時間午後1時現在、グローベックスのS&P500先物は小幅高で推移している。昨日通常取引終了後に発表された半導体大手クアルコムの7-9月期決算は、売上高が前年同期比18%増の48億7100万ドル、純利益が同20%増の12億7100万ドルと市場の予想を上回った。スマホ向けMPU(超小型演算処理装置)が好調に伸び、収益拡大のドライバーとなった。この良好な決算を受けてクアルコムの株価はアフターマーケットで急騰、通常取引の終値対比8.8%も上昇する場面があった。今晩の米国株式市場でどこまでクアルコムの好決算がほかのハイテク株に波及するかが注目のひとつである。

筆者は、今晩の米国株相場は押し目買いが入って下げ止まるとの見方をメインシナリオとするが、懸念材料を二つ挙げておく。一つは、ダウ平均がチャート上のサポートラインを割り込む水準まで下げたことだ。一目均衡表の雲の下限や200日移動平均線を下回った。しかし、これらのチャートポイントは「だまし」となることもある。ダウ平均は6月1日にも274ドル安となって200日移動平均を下回ったが、翌営業日4日には小幅安、5日には26ドル高と下げ止まり、6日には286ドルと急伸、それまでの下げを取り戻し、200日移動平均を超える水準に回復した。そこからダウ平均のラリーが始まり、先月5日に2007年12月上旬以来、約4年10カ月ぶりの高値をつけるに至ったことは記憶に新しい。6月初旬の年初来安値に至った調整は、いわゆる「Sell in May」で下落相場が始まってちょうど1カ月。今回も年初来高値をつけた10月5日から1カ月。日柄的には調整が完了してもよい頃だ。



懸念材料の二つ目は、前回の大統領選挙があった2008年11月の大暴落は2日に及んだという点である。ダウ平均は大統領選挙投開票日の翌日に486ドル安したことは既に述べた通りだが、その翌日も443ドル下げ、その2日間で1000ドル近い下げを演じ、2日間の下落率としてはブラックマンデーがあった1987年以来最大となった。とは云っても、2008年11月はリーマンショック直後の市場混乱期であった。過度に参照するのはミスリーディングと思われる。

比べるなら、389ドル安を記録した昨年11月9日の方がいい。冒頭に小林秀雄を引用して、「上手に思い出すことは非常に難しい」と述べた。ただ思い出すだけではだめだ。「上手に思い出す」ことが重要である。

昨日のダウ平均の下げ幅は、389ドル安を記録した昨年11月9日以来の大きさ。しかし、昨年11月9日にはシカゴのS&P500ボラティリティ・インデックス(VIX指数)、通称「恐怖指数」は前日比で31%も急上昇したのに対し、昨日は8%しか上昇していない。しかも、絶対水準がまだ20ポイント未満にとどまっている。つまり、ダウ平均の下げ幅そのものは大きいが、金融市場が受け止めた「深刻度合い」という点では、軽微なものだったということである。この点については、為替相場が円高ドル安となっても80円を若干割り込む水準にとどまったことや、総じて1%台の下落率に収まっているアジア株式市場への影響をみても納得的と思われる。






(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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