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アマデウスたち

中田 力
「アメリカの医者」としての矜持

週刊ダイヤモンド編集部
【第1回】 2007年10月12日
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中田力 「博士」は英語で「Ph.D.」と書く。ドクター・オブ・フィロソフィの略。もともとは哲学博士という意味である。

 その称号がふさわしい。臨床医と脳科学者の二つの顔を持ち、複雑系である人間の心のありかを探り、どう生きるかという永遠の問いの解明を天命とし、科学と感性が無縁ではないことを自ら体現してみせる。

 東京大学医学部卒業後、臨床研修の場を米カリフォルニアに選んだ。18年間、ジャングル病院と呼ばれる巨大な郡病院の第一線で学び、最後はカリフォルニア大学脳神経学教授として教えた。人種、人生の坩堝の中で、コカイン常習者はもちろん、狂犬病まで診た。今でも自宅のあるサンフランシスコに戻れば、患者が列を成す。職業はと尋ねられれば、必ず「アメリカの臨床医」だと答える。

 臨床の合間を縫って、研究でも卓越した成果を残すのが米国の一流の医者だ。脳の機能を映し出す核磁気共鳴装置の世界的権威としても知られ、1996年に脳機能のメカニズムを解き明かし、「渦理論」と名づけた。グリア細胞の中の水分子を特異的に通すタンパク質構造に、情報処理に関する機能が備わったという衝撃の異説。

 ニューロンのつながりが脳の機能を生むという医学会の天動説に対し、受け入れがたい地動説だ。しかし、ハイゼンベルクの不確定性原理が現代物理学の道筋をつけたように、いずれは新しい原理として受け入れられるに違いない。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

中田 力(Tsutomu Nakada)●臨床医・脳科学者。1950年生まれ。カリフォルニア大学などにて臨床研修を受け、引き続き臨床教育を行なう。この間、研究者としてメジャーグラントを取り続け、1992年、カリフォルニア大学脳神経学教授に就任。1996年、研究の場を新潟大学統合脳機能研究センターに移し、日本の医療、科学に問題提起をし続けている。

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