12月7日、ロイター通信がロンドン発で、「不況に強い悪への投資、倫理的な投資はオバマ氏の政策に期待」と題し、社会的責任投資(SRI)に関連する興味深い記事を配信していた。

  記事は「景気後退局面では、たばこやアルコールといった悪習に関する分野があえて投資をする勇気がある人々の間では好まれる」ということと、「オバマ次期大統領のクリーンエネルギーの投資や規制強化などの政策が軌道に乗ったら、もっと社会的に価値の高い分野でも利益を得ることができるかもしれない」ということの二つを述べていたが、率直に言って、後者はあくまで期待にすぎず、読後感としては、印象に残るのは前者だ。

 そもそもSRIとは、投資を通じて、倫理的な企業を応援し、非倫理的な企業から資金を引き上げることで、差をつけていこうという、投資手法であり、同時に、一種の社会運動だ。伝統的に、たばこ、アルコール、ギャンブル、武器関連といった4セグメントの銘柄が投資対象から外される傾向がある。

 とはいえ現実には、不況でも戦争(アメリカの得意とする公共事業だ)はなくならないし、不景気の時こそ博打が流行る場合もある。ましてや、たばこやアルコールは急にやめられるものではない。アルコールやたばこは習慣性の強いものだから、人々が欝な気分になりがちなリセッション時には相対的に業績が安定していて強いという見方は確かにできるのではないか。

  そこでSRIへのアンチテーゼとして、「ヴァイス・ファンド」すなわち悪徳ファンドを名乗る商品を出して運用する人たちもいる。

 ロイターの記事内でも、相対的に健闘している“悪習銘柄”が複数紹介されていた。たとえば、イギリスのインペリアル・タバコは、英国やそのほかの国々で禁煙に関する法律が強化されているにも関わらず、年間の調整後利益が15%増加したという。同社の株価は11月30日までの1年間で31.2%下落したが、FT100種総合株価指数の下落率は35.8%なので、インデックスを上回るパフォーマンスだ。また、ブリティッシュ・アメリカンタバコも同時期の下落率は14.6%に止まっている。酒類世界大手のディアジオも18.1%の下落と、指数をアウトパフォームしている。