東京五輪柔道男子60キログラム級で金メダルを獲得した高藤直寿と電話で話す首相の菅義偉。人気取りのための行為と映り、内閣支持率の回復にはつながっていないようだ[代表撮影]東京五輪柔道男子60キログラム級で金メダルを獲得した高藤直寿と電話で話す首相の菅義偉。人気取りのための行為と映り、内閣支持率の回復にはつながっていないようだ[代表撮影] Photo:JIJI

 賛否両論が渦巻く中で始まった東京五輪は日本人選手のメダルラッシュが続く。ほとんどのメダリストたちがインタビューで異口同音に語るのが、開催実現への感謝の言葉だ。

「たくさんの人のおかげで開催までたどり着いた。いろんなことを考えると、今はたくさんの思いが込み上げてきた」(柔道男子66キログラム級金メダリストの阿部一二三)

 阿部が口にした「たくさんの人」の中には、首相の菅義偉も含まれていたに違いない。菅に対しても「開催してよかった」とのメールや電話が続々と来ているようだ。確かに菅は一度もブレることなく開催に向けてまっしぐらに駆け抜けてきた。「五輪の中止は政権の終わり」(閣僚経験者)との声も出ていただけに、菅が一息ついているのは間違いないだろう。

 ビデオリサーチによると、開会式の平均世帯視聴率(関東地区)は56.4%に達した。過去最高の57年前の前回東京五輪開会式の61.2%(関東地区)に迫る高視聴率となった。競技が始まっても日本人選手の勢いは止まらず、水谷隼・伊藤美誠組が日本卓球初の金メダルを獲得した混合ダブルスの平均視聴率は24.6%。瞬間最高視聴率は40.5%を記録した。

「五輪開催で日本社会の空気が変わる」――。菅側近が描いた理想的な展開に近い。五輪開会前に報じられた菅の内閣支持率は軒並み40%を割り込み、中には危険水位の30%を下回る調査もあった。しかし、五輪開催が政権を取り巻く厳しい状況を一変させるゲームチェンジャーになっているかどうかの判定は難しい。そこで参考になるのが、日本経済新聞が7月26日付朝刊で報じた内閣支持率だ。

「内閣支持率最低の34%」