株式レポート
11月12日 18時0分
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【US Market Strategy】Vol.1 米国株式市場の投資判断 - 広木隆「ストラテジーレポート」

A pessimist sees the difficulty in every opportunity; an optimist sees the opportunity in every difficulty." (悲観主義者はすべての好機の中に困難をみつけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見いだす)

― ウィンストン・チャーチル ―




すでに先行して書いている「US Market Update」では短期的な相場の解説を行う。それに対して、投資判断の推奨、より深い分析や見通しなどは「US Market Strategy」でお伝えしたい。これから3回連続で「US Market Strategy」をお届けする。まず、初めに米国株に対する投資判断を示す。次に、米国株の水準感、すなわちバリュエーションについての分析を行う。3回目は有効な銘柄選択の手法と、その結果、導き出された有望銘柄をご紹介する。

ダウ平均は大統領選挙の投開票日の翌日に312ドル安と今年最大の下落を記録、その次の日も121ドルと大幅続落を経て、先週末の金曜日にやっと下げ止まった格好だ。それでも日中は80ドル近く上昇していた場面があったのに、オバマ大統領の「財政の崖」に関する記者会見でのコメントを受けて上げ幅を失った。いかにこの問題が市場の重石となっているかを表している。

前回のレポートで書いたように、ダウ平均は6月初めの年初来安値から10月初めの年初来高値までの上げ幅に対して半値押しの水準にまで調整している。ここまで調整している今の米国株は「買い」だと判断する。理由は、相場の重石となっている(あるいは、なってきた)悪材料が、これから好転していく(あるいは、好転している)ことに市場が早晩気づくだろうと考えるからである。

まず世界景気は改善している。雇用や住宅、貿易、消費などのハードデータ、家計、消費者、企業の景況感といったソフトデータ、その双方の統計で、米国経済が力強さを増していることが示されている。中国も輸出が9月、10月ともに約10%の伸びとなり、その前の2カ月の3%未満の伸びから改善した。中国のインフラ投資が加速していることを示す統計も見られる。中国景気も最悪期は過ぎたと判断して良いだろう。

次に米国の企業業績は7-9月期で底を入れる見通しである(グラフ参照)。トムソン・ロイターの調べでは主要500社中、9割に当たる446社が決算を発表した段階で前年同期比0.2%の減益となりそうだ。但し、63%の企業が市場の予想を上回る利益を発表しており、これは過去の長期平均62%を若干上回る。加えて、10月の初めには2.1%減益が見込まれていたのが0.2%減益とほぼ横ばいで着地となる。米国の企業業績見通しは下方修正のスピードが速いため、たいていは上ぶれて着地する。これは毎回のことである。次の四半期以降の利益の伸びが下方修正されているが、これも毎回のことであり、終わってみれば上ぶれて着地となるだろう。0.2%とは言え、3年ぶりの減益決算である。これが米国株式市場の重石となっていた原因のひとつだが、決算発表が出尽くすことで、その重石が取り除かれる。そして市場は企業業績のトレンドが増益基調に回帰することに目を向けるだろう。



目下、最大の株式市場の重石となっているのが「財政の崖」である。筆者は米国の政治問題や財政問題のスペシャリストではないので、この問題については人並みの情報しか持ち得ておらず、理解も大して深いほうではない。しかし、この問題の帰趨について現段階で確実に予見できるものなど誰一人としていまい。

筆者の愛読書『偶然とは何か 北欧神話で読む現代数学理論全6章』(イーヴァル・エクランド著)にはこういう記述がある。「確率論的なリスクと無知のリスクを区別しよう。確率論的なリスクとは、普通の確率計算から出てくるリスク、無知のリスクとは、これから起こることについての情報の欠如からくるリスクである。」
「財政の崖」の問題は明らかに「無知のリスク」である。だから、いくらシナリオ分析をしても意味がない。こういう事態にはいかなるスタンスで臨むべきか。参考になる書籍がある。『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』(ハワード・マークス著)である。著者は米国を代表する有力運用会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長であり共同創立者のひとり。同書は紛れもない名著である。あのウォーレン・バフェットが同書を買い求め、自社バークシャー・ハザウェイの株主総会で出席者全員に配ったというほどだから、その程が伺われるだろう。

ハワード・マークスが挙げる20の教えのなかで、まっさきに挙げていること、それは「二次的思考をすること」である。二次的思考とはどのようなものか。彼はこういう例を挙げる。
・「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次的思考。一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業と見ているが、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考である。
・「経済成長率は低下し、インフレ率は上昇する見通しだから、持ち株を売ろう」というのが一次的思考。一方、「景気見通しは悪いが、ほかの投資家はみなパニック売りしている。今が買い時だ」というのが二次的思考である。

ハワード・マークスはこう述べる。「一次的思考は単純で底が浅く、誰にでもできること(つまり、優位に立とうとする場合に役に立たないこと)である。(中略)一次的思考をする人は単純な方程式や安易な答えを求める。一方、二次的思考をする人は、投資で成功することは単純さの対極にあると分かっている。(中略)一次的思考をする者は、他の一次的思考をする者と同じことについて同じように考え、だいたいは同じ結論にたどりつく。当然のようにこれではすばらしい成果をあげることはできない。」(『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』より)

今はメディアの多く、そして筆者と同業のストラテジストの多くが口を開けば「財政の崖」と念仏のように唱えている。筆者のレポートを読んだ個人投資家から意見が届く。たいていはこういう内容だ。「広木さん、米国の株は当分上がらないと思います。『財政の崖』の問題があるのをご存知ないのでしょうか?」

読者の皆さんに質問です。<「財政の崖」が懸念されている状況では株は上昇しない。だから投資は見送ろう。>これは何次的思考でしょうか?

「財政の崖」は最終的には両党が歩み寄り、最悪の状況は回避されるだろう。大統領選挙が終わった今となっては、共和党にオバマ政権と対立を深めるインセンティブがないからである。むしろ、必要以上にこじれさせて景気を崖から転げ落とすようになれば、共和党の支持者である企業経営者に迷惑をかけることになるからだ。すでにブルームバーグ・ニュースは「米議会の民主・共和両党の有力議員は11日、いわゆる「財政の崖」をめぐる両党の対立で、解決策が出されるとの見通しをそれぞれ示した」と伝えている。以下はそのニュースの内容である。

「コンラッド上院予算委員長(民主、ノースダコタ州)は、税制や歳出に関する議会の委員会に対し財政赤字削減に関する広範な合意を形成するよう指示する「枠組み合意」に両党が達し得ると述べた。その上で同委員長は、両党が年内に比較的小規模な包括的歳出削減策と一部税法の改正でひとまず合意し得るとも指摘した。テレビ番組「フォックス・ニュース・サンデー」で語った。コンラッド委員長は、これらの議会委が行動しない場合、経済の不確実性を高めている自動的な歳出削減よりも受け入れやすい予備案で両党は合意しなければならないと指摘。「合意の余地があると完全に確信している」と語った。
共和党のコーカー上院議員(テネシー州)も同番組で、自動的な歳出削減が発動される可能性はほとんどないという点で自分も同じ意見だとした上で、民主党議員が大幅なコスト削減のためにメディケア(高齢者医療制度)の幅広い改革を受け入れる用意があれば、共和党が若干の増税に扉を開いていると語った。」

ハワード・マークスは「まえがき」のなかでこう述べている。「本書の内容が斬新で、思考力を大いに刺激し、物議を醸しさえすると感じてもらえることを期待している。もし『とてもおもしろかった。これまでほかの本で読んだことをすべて裏付ける内容だった』と感想をもらす者がいたら、私は本書が失敗作だったと感じるだろう。私の狙いは、読者がこれまでに触れたためしのない投資に関するアイデアや思考法を伝えることにあるからだ。」

前述した通り、同書は素晴らしい傑作に違いないが、残念ながらそれがマークス氏の狙いだとすれば、失敗作と感じてもらうことになるだろう。なぜなら、この本の内容は自著『ストラテジストにさよならを』とほぼ同じであるからだ。

マークス氏はこうも云う。投資は「良いものを買う」ことではなく、「ものをうまく買う」ことで成功する、と。

『投資で一番大切な20の教え』は2000円+税。ほぼ同じ内容の『ストラテジストにさよならを』は743円+税。読者の皆さんに質問です。「良いものを買う」ことではなく、「ものをうまく買う」ことが大事なら、どちらを買うのが得策でしょうか?


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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