本連載第7回に続き、今回も近隣紛争のケースを取り上げる。今回の紛争ケースはペットだ。統計を調査すると、犬と猫の飼育頭数は、14歳までの子どもの数を遥かに凌ぐ。理屈上は「子どもがうるさい」という住民同士のトラブルよりは、「犬や猫の鳴き声がうるさい」というトラブルの方が起きやすくなっているということだ。ペットの紛争に、法律はどのように関わってくるのか。事例を基に紹介していく。(弁護士・好川久治、協力:弁護士ドットコム

家族同然の3歳中型犬
屋内では放し飼い

 森田さん(仮名)は、東京都内にある一戸建ての自宅で、3歳になる中型犬を飼っていた。もともとおとなしい性格の人懐っこい犬だったこともあり、健康のために屋内と庭先では放し飼いにしていた。

 知らない人と出くわしたり、驚いたりすると、人に向かって吠えたり、飛び掛かったりすることが何度かあった。

「念のため、首輪をつけて、つないでおいた方がいいのだろうか――」

 しかし、森田家の大切な家族の一員であり、できるだけ自由に過ごしてほしいという思いもあったし、人に吠えることはたまにあったにせよ、人を傷つけるようなことは一度もなかったため、首輪を常時つけておくという判断はできなかった。

 しかし、それは、あの日の事件で間違いだったと思い知らされた。

宅配便の女性を咬み
全治3ヵ月の怪我

 半年ほど前の週末、森田さんが自宅のテラスの窓を開けて、庭いじりをしていた。すると、玄関先で犬の吠える声が聞こえた。そして、直後に女性の悲鳴が聞こえた。