「2015年または2016年3月期の売上高は、急に半減するかもしれない…」

こうした状況が懸念される業界、それは商社や百貨店、広告代理店をはじめとした代理事業を行なう企業だ。しかし、この売上減は不況やビジネスモデルの変遷が原因ではない。欧米に続いて日本でも適用が視野に入ったIFRS(国際財務報告基準)が大きな原因となっている。

 前回前々回で述べたように、日本においてIFRSは2010年3月期から上場企業の連結財務諸表への任意適用が認められ、2015年または2016年3月期には強制適用となる予定である。

 「会計のグローバル・スタンダード」ともいえるIFRS。適用することによって各上場企業の経理担当者などがその対応に追われ、苦悩することは前回述べた通り。

 その一方で、財務諸表を情報として利用する投資家にとっても、日本のIFRS適用は人ごとではない。なぜなら、IFRSでは、これまで投資家が慣れ親しんできた財務諸表とはまるで異なる形式・ルールで財務情報が記載されるようになるからだ。

 伝統的に日本企業や日本の投資家は「売上高の絶対額」や「当期純利益」などに一喜一憂する傾向が強い。しかし、「多くの投資家が企業を分析する際、必ず注目する『売上高』と『当期純利益』は、IFRS適用によって投資情報としての重要性が低下するかもしれない」と山崎彰三・公認会計士協会副会長は指摘する。

 つまり、もし日本基準の財務諸表しか知らなければ、IFRSでルールなどが変わったにも関わらず、冒頭のような“売上高が減少した”事実について誤った認識をし、投資判断を間違いかねないのだ。

 では、同じ財務諸表でも日本基準とIFRSで、どのような違いがあるのだろうか。

財務諸表の表記が一変!
「当期純利益」はもはや必要なし?

 これまで我が国における会計基準では、財務諸表は貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)、株主資本等変動計算書(S/S)で構成をされてきた。

 一方、IFRSにおいては、財務諸表は財政状態計算書、包括利益計算書、株主持分計算書、キャッシュフロー計算書から構成される。つまり、キャッシュフロー計算書を除き、財務諸表の名称がこれまでとは異なる。

 異なるのは名称だけではなく、中身も同様だ。キャッシュフロー計算書と株主資本等変動計算書(IFRSでいう株主持分計算書)は、両基準においてほぼ同様の形式で記載されるが、貸借対照表と損益計算書については、大きく形式が違っている。IFRSではどのように表記されるのか、具体的な例を挙げて説明しよう。