ガン細胞を見つけて死滅させる
NK(ナチュラルキラー)細胞

「戦時に出動する軍隊のようなB細胞、T細胞に対して、いつも体全体をパトロールして、ウイルス感染した細胞やガン化した細胞をいち早く見つけて攻撃してくれる、おまわりさんのような免疫がNK細胞です。このNK細胞が元気であれば、ガンが増殖することもありません」(奥村氏)

 しかしその体内のおまわりさんは、年を取ると力が落ちる。20代がピーク、50代でその約半分、70代で約10分の1の能力になってしまうという。高齢になるほどガンの発生率が高まるのも、NK活性の低下と関係があると考えられている。

 また精神的ストレスにも弱く、特に日内リズムの変動に弱い。

「日内リズムとは、昼は交感神経が優位に働くので仕事に向き、夜は副交感神経が優位に働くので休息に向く、そういうサイクルです。規則正しい生活リズムを守っていれば問題はありませんが、夜勤・昼勤のシフト勤務を繰り返したり海外との往復が多かったりと、生活サイクルがバラバラな方たちは、NK活性が低くなる可能性があります」(奥村氏)

 体内でおまわりさんの取り締まりが弱まると、すぐに風邪をひいてしまったり、治るまで時間がかかったりする。過去1年を振り返り、自分が何度風邪をひいたか思い出してみよう。1回程度なら心配ないが、3回以上高熱で寝込むような風邪をひいた人は要注意。風邪は免疫力のバロメーターなのである。

免疫力を高める
「不良長寿」のすすめ

 NK細胞の活性化には、日ごろどんなことを心がけていればいいのだろうか?

 奥村氏によれば、「責任感が強く自己犠牲的で自分の感情を抑え込む人は、免疫力の低下を招きやすい」という。

「そういう人ははたから見ると“いい人”です。つまりNK活性を上げるには、“いい人”をやめればいいのです。ストレスをいつまでも引きずらず、発散することが大事。いい友達や恋人をつくることです。そしてよく笑うこと。ゲラゲラ笑うことで、心身がリラックスし、自律神経の働きが安定します。憂さは笑い飛ばして、頭の中を真っ白にする時間を持つことが大切です」

 免疫学の権威が説く「不良長寿」のすすめは、免疫力は薬に頼らずとも自分で上げられることを示している。ガンを防ぎたい人にとっても、ガンを治したい人にとっても、まずは自分の中の免疫を味方に付けることが重要である。