階級社会#1Photo:Nick Brundle Photography/gettyimages

日本は経済大国ではなく、貧困大国になってしまったのかもしれない。コロナ・ショック後に実施された階層調査で、衝撃的なデータが明らかになった。経営者が中心の「資本家階級」から非正規労働者が属する「アンダークラス」までの全5階級において、年収が激減し貧困率が上昇するという深刻な結果が導き出されたのだ。特集『新・階級社会 上級国民と中流貧民』の#1では、誰しもが上昇できない階級社会の実像を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

コロナ禍で「1億総中流」の幻想は崩壊
現代版カーストの恐怖

 8月22日に投開票が行われた横浜市長選挙で、菅義偉首相が推す候補が大敗を喫し、今秋に迫る衆議院選挙をにらんで大政局に発展しそうな雲行きだ。

 日本で格差拡大が始まったのは1980年頃のことだ。格差を縮小し、貧困を解消することは、現代日本における最大の政策的課題、政治的テーマである。

 そして新型コロナウイルス感染症の拡大は、格差是正の必要性を一層強めたといえるだろう。コロナ禍は、日本人の「1億総中流意識」を崩壊させた。ただでさえ「自身が中流だ」という意識は希薄になってはいた。それでも、なんとか中流や“中の下”に踏みとどまれるかもしれない──。人々がかすかに抱く「中流への幻想」すら、完全に消し去ってしまったのだ。

 コロナ禍は、人々に平等に襲いかかったわけではない。コロナショックによる経済的・社会的な打撃には、「(人々が属する)階級による違い=階級性」がある。勤務先の業種の優勝劣敗や働き方の激変が格差拡大を助長し、日本社会は “分厚い中間層”が下流へ滑り落ちる「新・階級社会」への移行を急加速させているのだ。

 それは、出自や就職時期の経済環境などによって階級が決まる「現代版カースト」とも言える理不尽な世界。格差という言葉では物足りない「階級格差」が深刻化している。そして、親から子へ子から孫へと階級格差は世代を超えて連鎖してゆく。

 最新の雇用情勢も芳しくない。2020年6月は完全失業率2.9%、完全失業者数は206万人と17カ月連続で増え続けている。

 しかも、このような国の調査だけでは、階級格差の深刻さは分からない。例えば、ハローワークで登録しない限り労働者としてカウントされず、無業者(求職意思がありながら、就職を諦めている人)の存在を見逃してしまう。

 橋本健二・早稲田大学人間科学学術院教授は、データを駆使して日本社会の階級構造を定点観測してきた格差問題のスペシャリストである。

 今回、橋本教授の協力を得て、コロナショック前後で世帯収入、貧困率、働き方がどう変わったのかを徹底検証した「階層調査データ」を初公開する。格差世襲を裏付ける衝撃の事実が明らかになった。