株式レポート
11月16日 18時0分
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素直になれなくて - Think Simple シンプルに考える - - 広木隆「ストラテジーレポート」

テレビ東京ニュースモーニングサテライトで株のコメントを担当している。「今日の株の見通しはマネックス証券の広木さんと電話がつながっています」という例のコーナーである。楽屋話で恐縮だが、あのコーナーは前日のうちに話す原稿を局に渡しておいて、それを当日の朝5時に池谷キャスターと最終確認する段取りになっている。米国市場が動けば、それによって予想レンジなどを変更しなくてはならないからだ。昨日の見通しは「解散・総選挙の日程が具体化し、政権交代の思惑から金融緩和期待で円安が進んでいる。今日の株価は上昇するだろう」というものだった。前述の通り、打合せは午前5時、本番オンエアは午前6時前。これが夏時間なら問題ない。日本時間の5時にはNY市場が引けるからだ。ところが冬時間だとオンエアの6時前はちょうとNYの大引け直前、まだマーケットはクローズしていないで動いているからやりにくい。

オンエアが始まった。「シカゴ日経平均先物の値です。8,665円ですね。今日の株の見通しはマネックス証券の広木さんです。おはようございます」と池谷キャスター。そのとき、ちょうどダウ平均が200ドルを超える下げとなっていた。それを見た池谷キャスターは「ニューヨークがだいぶ下げ足を速めてきて、いまダウの下げは200ドル超となっています」と打ち合わせにないことを言い出した。慌てた筆者は、「そうですね…。本来なら円安を受けて日本株も上昇と見てましたが、これだけの下げを見せつけられると上値が重くなるかもしれません」などと答えてしまったのである(>_
確かにシカゴの日経平均先物は一時大幅高となったものの、米国株の急落につれて値を消す展開となった。しかし、昨日の東京市場は大幅高。米国株の急落にもアジア株式市場の軟調にも引き摺られることなく、日経平均は前日比164円高の8,829円と高値引けで8,800円台を回復した。上げ幅は10月18日以来約1カ月ぶりの大きさだった。

この上げ相場を見て、筆者は素直に喜べなかった。テレビのコメントで述べた見通しを外したからではない。相場って、こんな単純でいいのか?という思いに捕らわれたからである。だって、「分かっていたこと」じゃないか。「近いうちに」解散があるのは。解散・総選挙となれば世論調査の結果を見るまでもなく、政権交代となるだろう。その結果、総理の座に最も近いのが安倍・自民党総裁で、安倍氏は自民党の総裁選のときから日銀法改正まで持ち出して積極的な金融緩和論を展開していた。筆者は10月31日付けレポート「もう円は買わなくていい」で、こう述べている。

<デフレ脱却への取り組みで、前原担当相、白川方明日銀総裁、城島光力財務相は3人の連名による共同文書を発出した。(中略)民主党政権にあって、こういう状態である。「近いうち」に衆院解散があるだろう。都知事選とのW選挙との声も聞こえてくる。自民党が政権につけば、この圧力はさらに高まるだろう。筆者が指摘したいのは、今後の方向性についてだと述べた。「インフレになる」というのは気が早過ぎるが、方向性としては、どちらに向かっていこうとしているのか?と問いたい。方向としては、インフレの方向に向かっていることは間違いない。(中略)市場は早晩、気づくだろう。もう、これは「日銀の意志」を超えていると。日銀の意志で追加緩和は止めることができないということに。日銀は、迫力や意思表示や市場とのコミュニケーションははるかにFRBに劣るものの、FRBの後追いで、事実上、無期限緩和に足を踏み入れているということを、早晩、市場は気づくだろう。>

日経平均は今日も続伸し、9,000円の大台を回復した。相場が上がるのは、もちろん良いことだ。しかし、こうも言いたくなる。だったらこの前の7日続落はなんだったのか?分かっていたことじゃないか、「近いうちに」解散となれば円安・株高となるのは。そこが釈然としないところである。

筆者が好きなのは「Buy On Rumor, Sell On Fact (噂で買って、事実で売る)」という格言であり、また実際にそのような展開となるのを見るのが好きだ。 相場は、そう単純じゃない、というところを教えてくれるからだ。だから、解散・総選挙が決まったら、円安・株高であっさり9,000円台回復では単純過ぎるだろう、と突っ込みたくなるのである。
むろん一昨日に野田首相が抜いた「伝家の宝刀」は、タイミングが絶妙だったというところはある。焦らしに焦らして、このままでは「近いうち」が越年どころか一時は来年夏まで、といった諦念すら市場の一部にはあった。だからサプライズとなった面はある。実際に年内解散、特例公債法成立で財政が動き出す、補正予算の成立執行という経済面の実利も見える。タイミングを評価した部分は確かにあるだろう。但し、相場上昇の大部分はやはり日銀の緩和期待の高まりによるものであることは議論の余地がないだろう。

前回のレポートでは、ハワード・マークス氏の二次的思考というものをご紹介した。しかし、相場に「必勝法」や「定石」というものはない。成功の要諦は臨機応変な柔軟性であろう。ストラテジストがそれを言い出すのは「風見鶏」「日和見主義」との誹りと背中合わせの危険性を百も承知ではあるが。

結論:「政権交代→日銀への圧力強化→リフレ的政策期待→円安・株高」というシンプルなシナリオを素直に信じていい。昨日買われた銘柄群がそっくりそのまま、今後の相場の有望銘柄になり得る。筆頭は不動産株だ。これについては半年も前から主張している通りである。筆者の過去の主張をご存じない読者は、こちらのレポートをご参照されたい(4月26日付け「渋谷ヒカリエと日銀の金融緩和」)。そこではこう述べている。

<日銀は2月14日の追加緩和で物価上昇の目途1%を掲げた。このことの意味は大きい。デフレ脱却を意味するからだ。「デフレ脱却など容易ではない」という懐疑論者も多くいるだろう。その通りである。容易でないから、①大胆な政策を、②長期にわたって、「やり続ける」ことになる。その結果、何が起こるか?「インフレ期待」は最終的に「いつか」醸成される。インフレ期待が高まれば、不動産は買われる資産の筆頭だろう。>

さすがに半年前から現在の政局を予見していたわけではない。しかし、いつかは「脱デフレ」の圧力が日銀に強くかかり、日銀が望むと望まざるとにかかわらず、最終的にアクセルを思い切り「踏まされる」ことになるとは予想していた。

それがここに来て現実のものとなりつつある。次期首相に最も近い人物が日銀との協調政策を積極的に発言するようになった。加えて、朝日新聞デジタル版は、みんなの党と日本維新の会の共通政策に日銀法を改正することで政府と日銀が物価安定目標に関する政策協定(アコード)を結ぶことが掲げられたと報じている。これは安倍氏の政策と重なるもので、より連立が組みやすくなったと言える。安倍氏は政権を奪還した際の経済運営に関して、これまでの自民党政権の対応とは次元の違う政策で対応すると述べているが、第3極とも連立するとなれば、市場の予想を超える「次元の違う政策」が打ち出される目も出てきたと言えよう。

ストレートに、シンプルに考えて円安シナリオに乗れば、自動車をはじめとしたグローバル景気敏感株も買っていける。自公政権樹立ならば公共投資関連、建設株も素直にいいだろう。

但し、エネルギー政策については紆余曲折が予想される。昨日は大幅高となった電力株は、お勧めしない。銀行株もそうだ。(さすがに実現性は薄いが)仮にマイナス金利となった場合、短期的には銀行の業績にはネガティブである。そもそも資金需要が弱いのに供給側の論理だけではカネは廻らない。その点は「日銀擁護論」の方々のおっしゃることに同意する。しかし、金融緩和の効果は直接的な資金需要の喚起だけではないことは多くの経済学者やエコノミストが主張する通りである。また別の機会に議論したい。
最後に、1%のインフレ目途も達成が難しいのに2%や3%のインフレターゲットは非現実的であり、期待先行で買われた分、後になっての失望・反動を懸念する声があるが、今一度、重要なのは方向性である、と強調したい。達成が難しいからこそ、目標を高く掲げる必要がある。弓を引いて矢を遠くまで飛ばそうとするなら、高い角度に放つ必要があるのと同じである。

マネックスラウンジのコラム『投資の潮流』に「アップルのイノベーションの源流」という話を書いた。Think Different のスローガンのことだ。アップルには、もうひとつの哲学がある。"Insane Simplicity" (常軌を逸したほどの単純性)、故スティーブ・ジョブズの信条である。Think DifferentとSimplicity。他者と違うように考えることとシンプルであること。一見、相反するようにも思える、これら二つのコンセプトにどう折り合いをつければよいか。投資における一つの回答はこういうことではないだろうか。

<常識に照らし合わせ、現実的な道筋を見極めていく。夢だけを先走って追い求めないこと。それが肝要だ。「こんな普通のことをやっていていいのか」「それで本当に勝てるのか」と思うことがあるかもしれない。確かに相場の世界には、「人の行く 裏に道あり 花の山」という格言がある。人と違うことをやらないと儲からないということだが、それは冒険をしろという意味ではない。

自分はブレず、当たり前のことをきちんとやっていけばいい。

なぜかというと、相場のほうが勝手にブレるからだ。マーケットはしばしば行き過ぎる。こちらがブレずにいると期せずしてマーケットの逆をいくことになる。「逆張り」は狙ってやるものではなく、堅実で常識的なスタンスを維持する結果としてそうなるものなのである。>
(『ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論』最終章「投資は不確実性を相手にするゲーム」より)

これだけを読むと、この相場に乗っていくのを諌めるように聞こえるかもしれないが逆である。これまでデフレにどっぷりとつかり、散々脆弱なマーケットを見せつけられてきただけに、この相場に懐疑的な声がまだ優勢だろう。シンプルに考えれば、円安・株高。それが世間の見方の逆張りとなるだろう。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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