このように、シニアの資産の特徴は「ストック・リッチ、フロー・プア」である(実はこの言い方は和製英語で、英語ではassets rich, cash poorと言う)。このため、いざ高額出費が必要という時のためにお金を蓄える傾向が強く、普段の生活においては倹約志向が強く、無駄なものにはあまり出費をしない消費スタイルの人が多い。

 社会保障や経済情勢など将来に対する明るい展望が見られないために、シニアの3大不安(健康不安、経済不安、孤独不安)がストックをフローに変えにくくしているのが実態なのだ。

 さらに、厚生労働省「国民生活基礎調査」平成22年を眺めると、世帯主の年齢階級別の世帯当たり1か月間の「消費支出」の傾向は、世帯主の年齢階級別の「年間所得」の傾向にかなり似ていることがわかる。ストックが多いからと言って、それがすべて日常の消費に回っているわけではないのだ。

フロー消費とストック消費を混乱するな

 シニア市場における消費の形態を消費に使う金融資産の観点から分類すると、1. フロー消費、2. ストック消費、3. ストック・フロー消費の3種類がある。

 まず、フロー消費とは主に消費財である。日常生活において消費するもので、比較的低額であり、いわゆる生活必需品であり、ほぼ毎日買うものだ。前述のとおり、一般には「フロー・プア」のシニアなので、そのフロー消費のなかに新たに自社商品を割り込ませようと思うなら、相当緻密なアプローチが必要だ。

 次に、ストック消費とは非日常消費である。一般には高額品で、いざという時に買うものだ。ストック消費には、金融商品、家のリフォーム、海外旅行、葬式・墓といったものが該当する。この消費のバリエーションは、まだ少ない。ストック消費をさらに促すには、もっと商品提案のバリエーションが必要だ。

 最後に、ストック・フロー消費とは、買う時に高額を支払い、利用する時にちょっとずつ支払うという形態の消費である。ストックで初期費用を支払い、フローでランニング費用を支払う商品がこの形態になる。有料老人ホーム、リゾート会員権、クルマなどが該当する。

 ただし、有料老人ホームについては、最近状況が変わってきている。数年前に比べて入居一時金の価格破壊が進み、最近では入居一時金が極めて低額、あるいはゼロという例も増えている。つまり、「ストック・フロー消費型」商品だったものが、「フロー消費型」商品に変わってきているのだ。

(次回は、12月3日に掲載します)


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