世界経済は、相場で例えれば、ジグザグ変動して上値と下値を狭めていく三角もちあいの頂点に近づき、どん詰まってきた。2008年の米国発金融危機で急落した後、09年はG20各国の果敢な政策発動によって持ち直した。しかし米英は、10年以降も債務処理に圧迫され、追加政策で耐えるのに精一杯。そこに遅れて欧州危機が顕在化した。さらに中国など新興国が米欧の苦境を尻目に持続した景気拡大サイクルを一巡させ減速した。「夜明け前が一番暗い」といわれるが、欧州底割れ、中国失速、米国頓挫といった悲観が最近まで目立っていた。

 しかし、秋以降に期待した光明が、今ようやく差してきた。米国では、債務処理の進捗で住宅指標が上向き、消費や雇用も底堅くなった。欧州では、まだ紆余曲折があるにしても、ECB(欧州中央銀行)の南欧国債買い入れ方針が功を奏して不安がいったん収束した。中国経済も底入れをうかがわせる指標が出てきた。まだ薄明かりながら、脱「どん詰まり」の兆候と期待したい。ただし三角もちあい後の相場の上放れのような展開は期待し難い。順当でも、欧州が危機回避をしつつ、米国と新興国の緩慢な回復が相互に支え合う程度だろう。

 世界に明るさが増す場合、今年どん詰まり気味だった為替はどう動くか。図はユーロが信認を得始めた02年を起点とする主要通貨の対ドル相場である。各通貨の右上がりの推移はドルの基調的な減価を示す。主導したのはドルからの分散投資の中核たるユーロだったが、ギリシャ発の債務危機で10年以降はダレ気味だ。今後の世界回復の要が米国となれば、ユーロは対ドルで1年後1.20ドル、2年後1.15ドルに下落するとみている。

 ユーロに次ぐ分散先の英ポンドは、07年まではユーロと連動して強かった。しかし08年に米国と同じ金融危機に直面しユーロから離れて下落。その後、欧州危機の煽りで対ドルでも一段安となった。今も割安水準にあり、今後ドルの失地回復過程で対ユーロでは強めに推移するだろう。