2012年の債券市場最大リスクは
オバマ大統領が再選されないことだった

 筆者はストーリーラインとして、2012年の日米債券市場の最大のリスクは、現職のオバマ大統領が再選されないこととしてきた。

 市場のなかでも、ロムニー候補が大統領になった場合は金利上昇と見る向きが多かったが、その理屈としてロムニー候補の場合、バーナンキ議長退任というシナリオがあり、その場合、金融緩和の解除時期が前倒しになるとするものだった。

 一方、筆者が今年、オバマ大統領が再任されないことが債券市場最大のリスクシナリオとして考えてきたのは、金融政策よりもむしろ財政政策にあった。今年の米国景気が下振れしすぎた場合には、オバマ大統領への反対票が集まって再選が困難になることで、「景気があまりに悪すぎることも債券市場のリスクシナリオだ」と、一般的な認識とは異なる評価を行なってきた。

 したがって、年半ばにかけ米国景気の悪化が議論されたときには、債券市場に警戒的なスタンスを示し、夏場以降、米国経済の楽観観測が生じたことは、むしろ債券相場を長持ちさせる要因としてきた。

 ロムニーになれば、結局前例に囚われない財政拡大の可能性もあった。このような考えの背景には、もし財政が緊縮から拡大の方向に向かう可能性があるとしたら、現職のオバマ大統領が敗れるほどの経済不満の高まりに伴う「逆バネ」によって、財政緊縮バイアスをなし崩し的に戻すシナリオしかないと考えてきたからだった。

 その1つの歴史的事例として、1980年の米国大統領選で民主党のカーターから共和党のレーガンに大統領が代わったことを、念頭に置いてきた。当事、レーガン候補は「小さい政府」を掲げながらも、大統領に就任すれば「大減税+軍事支出拡大」で財政赤字を拡大し、結果として財政拡大に大きな舵を切った。