コロナ、ワクチンと向き合う開業医が語る政府の「失敗」とウイルスの歴史(下)Photo:PIXTA

インフェクションコントロールドクター(感染症や感染制御、院内感染対策を専門に取り扱う医師)として数十万人に新型コロナウイルスのワクチン接種をしたMYメディカルクリニック(東京都渋谷区)の笹倉渉院長に話を聞いた。後半では、長い歴史の中でとらえた人類とワクチンの向き合い方を語ってもらった。(聞き手・構成/医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)

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ワクチン接種と死亡の因果関係は?

Q:ワクチン接種後の副反応を訴える患者さんも多いですか。

 はい。翌日は大切な予定は組まず、休暇を取って休むようにお願いしています。金曜日に接種できる医療体制が整うといいですね。

 欧米の治験データの副反応の報告では16.6%が38℃以上の高熱、それに対し日本では60%以上と4倍が報告されています。高齢者には副反応は出にくいですから、若い世代ではこの数字以上にさらに副反応率は高そうです。

 慣れてしまったインフルエンザの予防接種と違い、初めてのコロナ予防接種ですから、筋肉痛や、寝込んでしまうなど、医師も患者さんもわからないことも多く、より安全サイドに行動したほうが自分の身を自分で守れると思います。

Q:ワクチン接種後に亡くなる人もおられるため、接種を悩みためらう患者さんも多いですか。

 打たない、行動自粛で乗り越えようと決めていらっしゃる方もいます。諸外国でも接種率が60%を超えると、接種の伸びが止まるというデータがある通り、接種しないという方は一定数現れるのです。コロナ自体、全体の陽性者の中で亡くなる割合は2%、これはあらゆる他の疾病と比較して低い数字です。

 今のワクチンの性能だと、半年に1回打たないといけないかもしれません。さらなるワクチンの開発も進み、人類とウイルスとの環境適応のせめぎ合いは続きます。ワクチンを打っても感染はしますが、重症化の確率は格段に下がります。できるだけの自粛をしながら、いずれ日本発のワクチン開発も待たれます。

Q:ワクチン接種後に死亡するケースがあります。副反応との因果関係はあるのでしょうか。

 そもそも死因というものは、脳や心臓、肺などが原因となります。ワクチンが原因で亡くなったという因果関係は立証が困難です。現状、副反応をしっかりと診られる医師はほとんどいません。

 コロナでは非常に多い件数のレポートが上がっていますが、ワクチンは毒物と違い、死因として証拠が残りませんし、ワクチンが体に与えた影響はどうしても現場の医師の主観が入ってしまい、評価が難しいのです。

 累計1000人を超えた“ワクチン接種後の死”では、ワクチン接種との因果関係は認められていません。ワクチンは予防医療なので、患者さんが「予防したい」という希望があって打ちに来ます。

 要らぬ臆測を招かぬためにも、ワクチンが体に与えた影響、例えば血圧が上がるから注意が必要だといったことなど、検証を基にした情報をしっかりと提供してもらいたいと思います。

 医師は、副反応が起こったときはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)にレポートを提出します。結構手数がかかります。副反応があると、患者さんの中にはクレーマーのような態度で来る人もいます。商品でいえば返品対応のようなものです。面倒に思う医師が多いですが、うちはすべて出そうと決めています。