「顧客満足度300%」を前提にする

時代の荒波を乗り越える会社の鉄則<br />「開発担当者」は置かない昭和40年代に開発され、ロングヒット商品となっている「45番」。そのウェットスーツを着たロシアのアレクセイ・モルチャノフ選手。2012年に潜水の世界新記録(125メートル)を樹立した。


「それだけじゃ、顧客満足度300%は無理ちゃうの?」

 新製品のアイデアが出たり試作品ができたりすると、僕は必ず聞いてみる。そう、ウチの会社の目標は「顧客満足度300%」。これまた、常識で絶対にたどり着けない数字だ。

 小学生でもわかることだけど、顧客満足度は最大でも100%。実際には全員が100%満足することはまずないから、平均して80%か85%くらい行けたらいいほうじゃないかな。

 だって、一人が「すごいわあー、100%満足やわあー」って言ってくれても、もう一人が「わるくないねんけどなあ、ま、50%くらいにしときましょか」って顔をしかめたら、平均すると75%に落ちてしまう。

 常識の範囲で考えれば、100を超えることは絶対にない。でも、本当にそうかな。ここでも、ちょっと常識を疑ってみる。

 ひと口に「顧客満足度」と言っても、その中身はさまざま。

 たとえば、ウエットスーツを買ってくれた人が3人いたとしたら、

 「着心地がええから、好きやねん」と言う人もいれば、「ぽかぽかしてホンマに温かいから、好きやねん」と誉めてくれる人もいる。それから、「タイムが速くなるから、好きやねん」と喜んでくれる人もいるはず。

 実際、トライアスロンの選手の場合は、とにかく速く泳げればいい。ずっと動き続けてるわけだから、保温性なんかなくてもいいわけ。逆に海女(あま)さんみたいに長時間潜っている人にとっては、身体が冷えないこと、締めつけのストレスがないことが一番大事。さらにダイビングに使う場合は、アマチュアの人が着ることも結構ある。だから、何よりも安心感があるかどうかを気にする。