超低打率人材の活用法

「ヘンなやつ」「アホなやつ」は、ここでは紹介しきれないほどたくさんいるけど、あと一人だけ。それは、絶対に言うことを聞かないやつ。

 こっちが「これ、作っといて」とオーダーしても、まったく違うものを仕上げてくる。人の話を全然聞いていなかったんじゃないかと思うほど、毎回毎回、見事にスペックアウトしてくる。「頼むから、ヘンなもんだけは作るなよ!」と念を押しても、というよりむしろ、こっちが念を押せば押すほど、「ヘンなもん」ができ上がってくる。

 正直言って、そいつの打率はめちゃくちゃ低い。ほとんど成功しない。だけど、「そういう発想があったんか!」と驚かされることも多い。

 たとえば、ゴルフのグリップを作らせた時。普通サイズのグリップをオーダーしたのに、そいつは、どういうわけか、ゴムを膨らませる発泡剤を入れた。すると案の定、ゴルフのグリップが野球のバットくらいの大きさになってしまったのだ。

 常識的に言えば、ただの失敗。でも、受け取って見てみると、サイズこそ巨大になってしまったものの、一応グリップの形にはなっている。小さい金型からこんなに大きなものが作れるのかと、僕はたまげてしまった。

 考えようによっては、これも新しい発見だし、ひょっとしたらいつか使えるかもしれない。まあ、仮に使えなくてもアイデアの幅は広がる。ウチの基本戦略である超オーバースペックも、きっと、こういうところから生まれてくるんだと思うな。